2011年2月27日日曜日

歌集『縄のれん』


ざっと1カ月前、「いわき民報ふるさと出版文化賞授賞式」に臨席した。いわき地域学會としての招きだった。わが古巣のイベントである。久しぶりに“現場”の雰囲気を味わった。

最優秀賞は稲村泉さんの少年少女小説『一本松と杉の子の約束』。優秀賞には曽我朗子さんの歌集『縄のれん』、高橋彦彦さんの句集『邂逅』が入った。特別賞は社会福祉法人希望の杜福祉会の『私たちの歩んできた道』。「出版文化賞」だが4冊のうち3冊は文学、たまたま今回は「文学賞」になってしまったのだろう。

授賞式の祝辞で、いわき市長代理の鈴木英司副市長が新聞発表後、4冊全部を読んだことを明かした。こちらも負けてはいられない。『私たちの歩んだ道』は手元にある。『縄のれん』=写真=は授賞式当夜、本人からいただいた。残るは小説と句集だ。

いわき総合図書館で『一本松と杉の子の約束』『邂逅』を立ち読みし、あとで残る二つ、なかでも歌集を熟読した。

平の白銀町でご主人と「暮六」という居酒屋を開いていた。焼き鳥が売りではなかったか。そんなにしょっちゅう通ったわけではないが、いつのまにか「ミスいわき」の娘さんも含めてなじみになっていた。

そのころをほうふつさせる歌――。

 バイトの子も吾もきりりと髪結ぶ居酒屋に立つ夕べの習い
 大鍋を四つ火にかけ炒る茹でる真夏の仕込みサウナのごとし
 閉店を告げても話し込む客に泊まられますかと言へば皆立つ
 カウンターに頬杖ついて客を待つ鍋の仕込みは食べ頃なのに

3首目の歌はなんとなく覚えがあるような……。それよりなにより、今も記憶に残る「冷奴」に納豆をのせたものは「つきだし」だったか。牛だかなんだかの「タマタマ」も記憶にある。夫であるマスターがにやにやしながら出して、食べたあとに正体を明かした。

ま、そんなことはさておき、あとがきを読むと、マスターが挿し絵をかき、いわきでフリーペーパーを発行している娘さんが編集・デザインをした。なんと3年がかりだったとか。忙しい仕事の合間に少しずつ編集するしかなかったのだろう。

そうしてできた夫婦・親子合作の歌集である。表紙のイラストにある「暮六」(赤ちょうちんが懐かしい)の縄のれんをかき分け、戸を開けて中に入ると、おいしい焼き鳥ならぬ歌が並んでいるという仕かけがにくい。

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