2015年7月8日水曜日

江筋の草刈り

 7月最初の日曜日は磐城小川江筋の草刈り日と決まっているのだろうか。5日の朝9時すぎ、わが家から夏井川渓谷の隠居(無量庵)へ向かうため、江筋沿いの細道をたどると、至る所で草刈りが行われていた。水がせき止められた水路に入って山岸の草刈りをしている人たちもいた=写真。
 磐城小川江筋は夏井川左岸の下流域を潤す農業用水路だ。今から350年ほど前の江戸時代前期に築造された。小川町の三島地内に、夏井川のカーブを利用した多段式、木工沈床の斜め堰がある。そこから山岸に沿って終点の四倉まで全長約30キロにわたって水が引かれ、広大な沿岸の水田を潤す。水道水にも利用されている。
 
 江筋沿いに平浄水場がある。そこからやや上流、江筋に接する小さな神社の境内に、風と水と太陽で発電する学習施設が設けられた。福島高専名誉教授が代表を務める「いわき自然エネルギー研究会」が運営する。
 
 その様子を見るため、江筋沿いに車を走らせることが多くなった。昔のブログを読むと、同じころ、同じように人が出て草刈りをしている。稲作農家にとっては、わが田に引く水は隣の田から来て隣の田へ去る水でもある。郊外を行き来し、古くからの行政区の区長さんらと話をしていて見えてきた、「水社会」のひとコマだ。

 街で暮らしている人にはなかなか想像が及ばないことだが、郊外の水田地帯では畦や土手の草刈りが欠かせない。草むらは農作物に害を及ぼす虫のすみかになる。8月は月遅れ盆。先祖の霊が帰ってくる前にきれいにしておこうという意味合いもあるのだろう。

 山里にあるわが隠居でも、先日、知り合いの造園業者に頼んで一段下の原っぱに群生するヨシを刈ってもらった。隠居が農村景観の一角を占めている以上は、農家でなくとも鈍感ではいられない。自然の移り行きのなかで草を刈る時期はおのずと決まってくるものらしい。

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