2015年7月18日土曜日

「いただかせていただきます」

 三度、三度の食事でなくてもいい。食べ物を出されたときには「いただきます」という。日曜日(7月12日)、ネパールを応援するイベントで初めて、ネパールカレーを食べた=写真。これももちろん、「いただきます」といって。
 7月10日夜のNHK東北Z「ふるさとにカンパイ!」でこんなことがあった。盛岡出身の若いママタレントが秋田の麹(こうじ)屋を訪ねて、甘酒を口にした。そのとき、口から出たのが「いただかせていただきます」。これにはのけぞった。さすがに本人もおかしいと気づいたのだろう、次になにかを口にしたときには「いただきます」に直っていた。

去年(2014年)のNHK紅白歌合戦でのひとこまを思い出す。以下、3連12行は小欄の引用(抜粋)。

 V6が伍代夏子さんの「ひとり酒」でバックダンサーをつとめた。歌が始まる前の白組司会・嵐とのかけあいのなかで、三宅健クンが「伍代さんの後ろで踊らせていただき……」というつもりが、「踊らされて……」とやってしまった。思わず爆笑した。すぐ後ろのイノッチ(井ノ原快彦)が頭をペタンとやったのが、またほほえましかった。

 敬語講師山岸弘子さんによれば、聞き手に違和感を与える「させていただきます症候群」には5つのタイプがある。<「さ」はいらない>型がその1つ。

「踊る」の場合――五段活用の動詞は「せていただきます」に接続するから、敬語を遣うなら「踊らせていただきます」だが、「させていただきます症候群」にかかっていると、「踊ら『さ』せていただきます」と過剰になる。「さ」は要らない。三宅クンはそのへんがごっちゃになって言い間違った。「踊らされている」ことも確かだが。

 そして、今度の「いただかせていただきます」はその用法がおかしいとはっきり分かる言葉「いただきます」に付いたから、本人も「あれ?」となったのだろう。

 田中章夫著『日本語スケッチ帳』(岩波新書)によると、「いただく」は本来、「もらう」とか「食う」といった意味の動詞だ。それに、「読んでイタダク・読ませてイタダク」のような「へりくだり」(謙譲)の用法を持つようになったのは、幕末のころの江戸言葉においてであり、比較的新しい言い方、なのだそうだ。

 いつもの癖で、動詞に謙譲の「いただく」を付けたから、「フジサンヤマ」のような「いただかせていただきます」になった。「……せていただきます」は要らない、といえる、格好の例として使える。

とはいえ、こうして「……(さ)せていただきます」をあげつらっていると、その言い回しになじんで口にしてしまわないか、という心配がないわけでもない。ミイラ取りがミイラになる、ということわざがあることだし。

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