いわき市立美術館で「神々の彫像 アンコール・ワットへのみち展」が開かれている。8月30日まで。「丸彫りの神像や仏像を、アンコール王朝時代を中心に、その周辺の彫像や関連遺物とともに紹介」している=写真(チラシ)。
2012年9月中旬、学生時代の仲間とベトナム・カンボジアを旅行した。カンボジアではアンコールの遺跡群を見学した。それもあって、美術館の「神々の彫像」群を興味深く見た。
たまたま、いわき総合図書館の新着図書コーナーに早稲田大学学術叢書12内田悦生著『石が語るアンコール遺跡――岩石学からみた世界遺産』(早稲田大学出版部、2011年)があった。借りて読んでいるところに、「アンコール・ワットへのみち展」が始まった。
アンコールの遺跡群では、「アンコール・ワット」はもちろん、「バンテアイ・スレイ」の「東洋のモナリザ」と称される女神のレリーフ、「バイヨン」の四面塔尊顔などに魅了された。雨季の終わりで、降ったりやんだりの日々。左手に傘、右手にカメラを持ってシャッターを押した。
『石が語るアンコール遺跡』によると、遺跡の主な建築材料は砂岩・ラテライト・レンガ・木材など。砂岩は①灰色~黄褐色砂岩②緑灰色硬砂岩③赤色砂岩――で、赤土のラテライトは周壁・参道・基壇表面あるいは内部に使用されている。近くのクレン山南東麓に石切り場の遺跡が多く残る。切りだした砂岩は水運あるいは象や牛を利用して建築現場まで運ばれたのだろうという。
遺跡がどう造られ、レリーフがどう彫られたか。旅行後に見たテレビのドキュメント番組によると、中央(内部)から建造が始まり、外へ、外へと造営された。積み上げられた砂岩の壁面にはレリーフが施されるだけの厚みがあった。
「アンコール・ワットへのみち展」では、砂岩だからこそというべきか、「神々の彫像」群の、表情の繊細さ、衣装の精緻さ、女神の上半身の豊満さに引かれた。きめこまやかなアンコールの美を堪能した。とはいえ、神々しいほどの「東洋のモナリザ」に比べると……という思いもまた禁じ得ない。「東洋のモナリザ」が飛び抜けて美しすぎるのだ。
関連イベントがいろいろ用意されている。7月26日午後2時には『石が語るアンコール遺跡』を著した内田早稲田大学教授が「アンコール遺跡の謎を解く――岩石学からのアプローチ」と題して講演する。夏井川渓谷にある隠居で土いじりをしなければならないし……、聴きに行くかどうか思案中。いや、早朝に土いじり、午後は美術館で勉強、という手もあるか。
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