2015年7月17日金曜日

じゅうねんよごし

 7月14日の「あさイチ」は田村市からの生中継だった=写真(「カブトン」とイノッチ)。昔から阿武隈高地で栽培されているエゴマ(方言名「ジュウネン」)を紹介していた。
 田村市の、ゆるキャラ「カブトン」のいる常葉町で生まれ育ったので、小さいときから「じゅうねんよごし」を食べてきた。「ごまよごし」と変わらない。種から油をとったり、炒ってすりつぶして「よごし」にしたりするのは同じだが、ゴマはゴマ科、エゴマはシソ科だ。植物としての姿かたちはちがっている。

 ジュウネンはいわきの「昔野菜」でもある。白ジュウネンと黒ジュウネンがある。葉は青ジソにそっくり、花もシソと同じように穂状に咲く。

 いわき市山田町の後輩の家で、夏の暑い盛りに「そうめんの冷やだれ」を食べたことがある。たれにはジュウネンが使われた。炒ったジュウネンとサンショウの皮を擂り鉢で擂り、味噌を入れてさらに擂り、水を加えてのばし、醤油その他で味をととのえたのだという。
 
 以前、この簡略版、サンショウ抜きで「そうめんの冷やだれ」をカミサンがつくった。酷暑にげんなりして、食欲もわかなかったが、それなりに腹を満たすことができた。

 阿武隈高地ではほかに、彼岸には「じゅうねんぼたもち」(春)と「じゅうねんおはぎ」(秋)もつくる。このごろは「えごま油」も販売している。「あさイチ」では、そのしぼりかすの「パウダー」も紹介していた。
 
 シソにそっくりの葉も塩漬けにして、“じゅうねんおにぎり”にしたりする。小学4年生のころ、一度だけ、母親から海苔(のり)ではなく、シソの葉で包んだおにぎりを渡されたことがある。
 
 町が大火事に遭って3年もたっていなかった。「海苔も買えないのか」。家々が復興に向かって歩んでいても、内実は再建のための借金を抱えて貧しかった。あれはもしかしたら、シソではなくてジュウネンの葉ではなかったかと、テレビを見ながら思った。同時に、貧しいなりに食文化は豊かだったのだな、とも。。
 
 エゴマは韓国料理にも使われる。震災が起きた年の夏、津波被災者・原発避難者支援に奮闘していたNGOの仲間と韓国料理店で暑気払いをした。カクテキ(大根さいころキムチ)、キュウリのオイキムチ、モヤシとゼンマイのナムル(ごま油あえ)、海鮮チジミ(お好み焼き)、ごま油を塗ってほんのり塩味を加えた韓国ノリ。そして、エゴマの葉と唐辛子の漬物(たまり漬け?)が出た。

 いわきで手に入れた会津の「七味」は唐辛子、ジュウネン(エゴマ)、サンショウ、陳皮(ミカンの皮)の四味だった。一般に「七色唐辛子」と言われるので、四味では少々物足りない。が、香りは高かった。
 
 エゴマ、いやジュウネンはこうしてみると、食卓の名脇役らしい。ジュウネンのよごしを、阿武隈の実りを食べたくなった。

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