きのう(3月11日)、いわき市立草野心平記念文学館で事業懇談会が開かれた。終わって、心平命名のおかずを盛りつけた昼食が出た=写真。
心平は昭和27(1952)年3月、49歳で東京・文京区に居酒屋「火の車」を開く。一戸建て棟割りで間口一間半、奥行き二間の小さな空間だ。同文学館常設展示室に店が復元されている。
お品書きが振るっている。昼食に出たのは、①「黒と緑」(海苔でまいたホウレンソウのおひたし)②「冬」(豚の煮こごり)③「もも」(鶏の尻の油いため)④「白夜」(スープ=キャベツ、牛乳、ベーコンなど)⑤「雑色」(漬物=きのうは白菜漬け)。主食は雑穀ごはんで、「火の車」では出していなかったのか名前はない。煮こごりがうまかった。
ほかに、⑥「麦」(ビール=きのうはノンアルコールが出たが、飲まずに持ち帰った)⑦「丸と角」(チーズとカルパス)⑧「ぴい」(ピーナツ)。こちらは文字通り酒と酒のつまみだ。仕事が終わって一杯やったあとにご飯を食べる――図だろうか。⑨「八十八夜」(玉露)はいい味だった。
きょう、同文学館で<居酒屋「火の車」一日開店>と銘打った文学館ボランティアの会の事業が行われる。常設展示室の「火の車」を見たあと、館内のレストランに移動し、心平命名のお品書きにちなんだ昼食を楽しむという。それを、一日早く懇談会のメンバーが“試食”したわけだ。定員20人で、観覧券と参加料500円が必要になる。
心平の『口福無限』(講談社文芸文庫)によると、心平は同人詩誌「歴程」263号(昭和55年9月)に、「料理について」という短詩を発表する。「ゼイタクで。/且(か)つ。/ケチたるべし。/そして。/伝統。/さうして。/元来が。/愛による。/発明。」
このとき心平は77歳。料理は家族の健康や成長を願い、素材にふさわしい食べ方を工夫して、見た目も味も調(ととの)える――つまりは「愛による発明」なのだ。「カネのための発明」ではないのだ。独自のネーミングもまた「料理愛」「食べ物愛」からきている。
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