私は、阿武隈高地のほぼ中央部のまちで生まれ育った。北東に鷲が羽ばたくような山容の岩山・鎌倉岳、南東に阿武隈の最高峰・大滝根山、西に田村富士の片曾根山、北西に移ケ岳。まちは標高700メートル余の片曽根山を除けば、1000メートル前後の山々に囲まれている。南北に延びる分水嶺の、なだらかな西側のふもとに位置する。
物心づいたころ、大滝根山の頂上には進駐軍(米軍)のレーダーサイトがあった。昭和34(1959)年、その基地が航空自衛隊に移管される。牛の背のようなスカイライン(山稜)をながめて育った古老は、そこに人工的な“こぶ”ができたことを嘆いていた。
浜通りの双葉郡に東電の原発と火発ができると、東京へと分水嶺の東側に送電鉄塔が立った。その鉄塔と送電線は原発震災後、火発を除いて“休眠”したままだ。
先日、県紙にJR東日本エネルギー開発の広告が載った=写真。<「環境影響評価法」に基づき、「(仮称)馬揚山風力発電事業
計画段階環境配慮書」を縦覧します>という「お知らせ」だった。「対象事業実施想定区域」はいわき市北西部の馬揚山を含む山稜上で、3月21日から4月20日までいわき市本庁などで縦覧する、とあった。
馬揚山はいわき市の三和町にある。グーグルマップでは「馬場山」。だれかが間違って書き込んだのだろう。国土地理院の電子地図で確かめると「馬揚山」(723.1メートル)。この山稜その他に風車が立つ。
自分のブログを読んで思い出したことだが――。平成26(2014)年11月、経産相と福島県の新知事が会談し、福島県内で発電された再生可能エネルギー買い取りを東電に求めることを明らかにした。東電の送電網を活用して、関東方面に送電する、と県紙が報じていた。その後、県の産業復興計画「イノベーション・コースト構想」に基づいて、その流れが具体化しつつあるわけだ。
馬揚山事業とは別に、浜通りでは洋上と沿岸部、阿武隈高地東側丘陵地域(いわき市~南相馬市)で風力発電が計画されている。「(仮称)福島阿武隈風力発電事業」では、川内村に住む知人が、目の前の尾根筋への設置計画変更を申し入れ、了承された。
すでに震災前、大滝根山と矢大臣山の間に風車の列ができていた。桧山にも。昔の古老が大滝根山頂の“こぶ”を嘆いたように、今の古老も送電鉄塔と風車のスカイラインを見ると滅入る。再生可能エネルギーの重要性は承知しながらも。
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