歌は、「米のめし」のあと、「おつけでば茄子(なす)汁 十六ささげのよごしはどうだい」と続く。
十六ささげは、いわきの昔野菜(在来作物)のひとつだ。さやの長さが30センチ前後になったところで収穫する。見た目はちょっと太い緑色のひも、といった感じ。さやの実が16個あるからその名が付いたという説もあるが、以前確かめたときには、実の数が22だったり、19だったりした。それだけ多いという意味での「十六」なのだろう。
このささげを、先日いただいた=写真(一番外側のひも状のもの)。カミサンが、じゃんがら念仏踊りの歌にあるように、ゆでてごまよごしにした。やわらかくてうまかった。
震災前、沼ノ内の土曜朝市で手に入れたとき、普通のインゲン同様、素揚げにしてみた。結果は「ん?」だった。生の段階ですでにやわらかいうえに、高温の油で加熱したから、ふにゃふにゃになった。やっぱり歌にあるように「よごし」にするのが一番らしい。ただし、ゴマよりも同じ昔野菜のエゴマ(ジュウネン)を用いた「じゅうねんよごし」がよりふさわしいかもしれない。
十六ささげは、食べるだけではない。『いわき昔野菜図譜』(いわき市、2011年3月発行)によれば、お盆の供え物のひとつでもある。8月16日の盆明け朝には、盆ござで供えたものを包み、冥途のみやげとして、十六ささげで包む――とある。
ついでに、もうひとつ。十六ささげは岐阜県の「飛騨・美濃伝統野菜」でもある。美濃地方といわき地方は「安藤の殿様」でつながる。江戸時代の宝暦6(1756)年、美濃加納から藩主安藤信成が磐城平に入封した。そのとき一緒に十六ささげの種も入って来た、という仮説はどうだろう。
きょう(8月13日)は月遅れの盆の入り。新盆家庭のすべての盆棚に十六ささげが供えられることはないにしても、お盆中は「十六ささげのよごしはどうだい」の歌があちこちで聞かれることだろう。
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