平の自宅から夏井川渓谷の隠居へ行くとき、神谷~中塩~平窪と田んぼの中の道を利用する。月遅れ盆の前、平窪の“農道”から小川へ向かう国道399号へ出るところで、カカシに出合った=写真下。
私が子どものころは、カカシといえば「へのへのもへじ」が定番だった。笠か麦わら帽子に、首に巻いた手ぬぐい、かすりの作業着。農夫の姿のカカシといえば、これ。無精ひげの「カールおじさん」もこの農夫像を受け継ぎ、麦わら帽子をかぶって首に手ぬぐいを巻いている。
そのカカシが、いつのころからかマネキン女子に替わった。初めて見たときはドキッとした。カカシにもはやりすたりがあるのだろう。
平窪のカカシは、女子は女子でもイスラムの「ブルカ」のように顔がわからない。つば広の日よけ帽子をかぶっている。後頭部は帽子から背中まで垂れた布、顔も布で覆われている。紫外線を気にする現代女性をリアルに表現している。
カカシは、スズメにどのくらい効果があるのだろう。鳥たちは、動かないものにはすぐ慣れる。農家としては、「へのへのもへじ」から「マネキン女子」に替わっても、効果は一時的、「やらないよりはまし」くらいの認識ではなかろうか。
田んぼだけではない。街なか、といってもわが家のそばのごみ集積所のことだが、そこにカカシが立ったこともある。ときどきカラスが生ごみを食い散らかす。業を煮やしたカミサンが、スタンド式の洋服掛けに服を着せて集積所に立てた。少しは効果があったかもしれないが、頭のいいカラスはすぐダミーと見抜いたことだろう。
平窪を抜けて小川に入ると、畑にブラブラ浮いているものがあった=写真下。何を栽培しているかはわからないが、こちらも「鳥威(おど)し」だ。小さな鳥たちが恐れる猛禽類、たとえばタカを模しているようだ。
それで思い出したことがある。真冬、事故か何かで死んだヒヨドリが1羽、畑につり下げられていた。ヒヨドリが畑の青物を狙うのは、冬が深まったとき。畑に残る白菜、キャベツなどの葉物がつつかれて、見るも無残な姿になる。効果はどうだったか。「被害ゼロ」は、もとより考えてはいないだろう。「ほどほどにしてくれよ」というサインのようなものではないだろうか。
カカシは、稲穂が垂れ、実りのときを迎えつつある――というシグナルだが、今年(2018年)はちょっと早い気がする。案の定、ゆうべ(8月22日)のローカルテレビは、会津坂下で稲刈りが始まったことを伝えていた。猛暑続きで実りが早まったという。
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