わが家からいわき駅前へ向かうとき、あるいは日曜日に夏井川渓谷の隠居へ出かけるとき、平市街の西方に屏風のように連なる山が見える。
南から湯ノ岳~三大明神山~鶴石山などと続く。なかでも三大明神山の尾根には風力発電の風車が立ち並ぶ。
1年前、風車のタワー2基が立ったのに気づいた。やがて山稜にニョキニョキとタワーが並び、今では肉眼でも9基の風車が回っているのがわかる。
中塩(平)の田んぼ道に出ると、必ず風車の数を確かめる。そして、阿武隈の中山間地域だけでなく、市街地でも風車が目に入るようになったことを、どう受け止めたらいいか迷う。
阿武隈高地は風力発電の一大基地になりつつあるようだ。自分が生まれ育ったふるさとの山々に巨大風車が立ち並ぶ光景を、私はできれば見たくない。
再生可能エネルギーの必要性を認めながらも、少年時代の記憶が、尾根の景観が傷つけられたようでたまらなくなる。
すでに震災前、大滝根山と矢大臣山の間に風車の列ができていた。同じ田村市の桧山にも風車が立った。
実家への行き帰り、風車を見るたびに、昔の古老が大滝根山の「こぶ」(自衛隊のレーダー基地)を見て嘆いた、という文章を思い出す。
先日、夏井川渓谷にある隠居から「スーパー林道」(広域基幹林道上高部線)を利用して、知り合いの古民家カフェ(下川内)を訪ね、直売所(上川内)で買い物をした。
気分転換を兼ねた日曜日のドライブで、上川内から下川内へ戻る途中、東方の里山に巨大な風車が立っているのが目に入った=写真。
令和2(2020)年、古民家の所有者である陶芸家の友人が亡くなった。上川内で葬儀が行われた。同4年にはその古民家が娘さんの手でカフェに生まれ変わった。どちらのときにも川内へ行ったが、風車はなかったか、あっても気づかなかった。
村では確か、水や自然を大切にするイメージ戦略からかけ離れているとして、風車の建設には反対の立場をとっていたはずだが……。東日本大震災と原発事故がそれをひっくり返したか。
スーパー林道は川前(いわき)の神楽山の中腹を縫って伸びる。隠居から駆け上がるとほどなく、林道からの登山道に風力発電所を知らせる看板が立っていた。
同じ水源地帯にある別の山はいわきで唯一、コマドリやコルリの繁殖地として知られる。
日本野鳥の会いわき支部は、コマドリだけでなく、ほかの希少種や渡り鳥への影響、環境保全の観点からも問題が大きいとして、風車建設の適地・不適地を明確にするゾーニングの条例化を求める要望書を市・県・国に提出した。
巨大風車を尾根に建設するには機材を運ぶための道路が必要になる。そのための森林伐採が進めば保水力の低下が懸念される。
水源地帯の問題は下流域の問題でもある。自然環境を守り、土砂災害や水害を防ぐためにも、メガソーラーを含めた再生可能エネルギーのゾーニングが必要になる。台風や低気圧はもはや昔の比ではない。
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