いわき市暮らしの伝承郷で企画展「馬と暮らし」が開かれている(1月26日まで)。
馬は、かつては農耕や荷物の運搬を担い、人々の暮らしを支えてきた。その馬が暮らしの中で果たした役割、馬に関する信仰などを、関連する道具や写真で紹介している。
3連休初日の11月2日に始まった。翌3日、伝承郷に用があるカミサンのアッシー君を務め、ついでに企画展をのぞいた。
伝承郷は民俗学的な視点に立つ施設だが、近年は歴史学にも踏み込んだ企画展示をしている。
「馬と暮らし」展では、民俗のなかに文学を取り入れていて驚いた。山村暮鳥や草野心平の馬の詩を紹介している。
メーンは同じ詩人の猪狩満直と馬のかかわりだろう=写真。伝承郷にはかやぶきの古民家が5棟ある。山を背負った手前3棟の中央が満直の生家だ。
その縁から満直と馬を、満直とつながりのあった暮鳥と心平の作品を取り上げた、というわけだ。
ちなみに、心平の馬はカエルを主題にした第百階級以前の作品で、『空と電柱Ⅰ』から「月夜の馬」、『BATTA』から「馬になる」を、詩集とともに紹介している。暮鳥の馬は最後の詩集『雲』から連作3編を紹介した。
北海道開拓時代の満直と馬が映った写真と文章には記憶がなかった。帰宅して『猪狩満直全集』(1986年)を開く。が、どこにも見当たらない。翌日も調べ直したが、やはりわからない。
ここは伝承郷へ出向いて直接、出典を確かめるしかない。というわけで、2日連続、「馬と暮らし」展を見た。
旧知のスタッフから説明を受けてわかったのだが、満直の写真と文章は、平成30(2018)年10~12月、いわき市立草野心平記念文学館で開かれた「生誕120年記念 猪狩満直」展で公開されたものだった。
そのときの図録に写真と文章が載っている。絵解きには「満直が、平町のマルトモ柴田書店店主、柴田徳二に送った写真と文面(いずれも複写)。満直がプラオ(西洋式犂)を操っている。文面では、馬を2頭所有していること、それらの経費で700円を要したことなどが記されている」とある。
大正末期から昭和初期、開拓農民として北海道で暮らした満直の目に映った馬はこんな感じだった=全集所収の「手記」(北海道開墾生活の実状)から。
「北海道の農夫は馬を中心として、馬によりかかって仕事をするのである。また年々子を産む。所謂、米櫃である。だから馬を大事にする。子供が病気しても中々医者にみせるやうなことをしないが、馬が病気すると早速獣医のところにかけつける」
暮らしの場こそ北海道だが、農耕に、運搬に馬が欠かせなかった様子がよくわかる。
阿武隈の山里でも昭和30(1955)年前後までは通りを荷馬車が行き来していた。馬車の持ち主が子供らをかわいがって、荷物と一緒に乗せてくれたこともある。
道はまだ舗装されず、かやぶきの農家には牛や馬の小屋があった。小屋を脱走して通りを駆け抜ける馬もいた。そんな時代が確かにあった。
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