大相撲秋場所は大の里の優勝で終わった。横綱・大関は圧倒的に強い――。子どものころに刷り込まれた印象は、しかし近年薄れつつあるようだ。
賜杯は横綱の手に渡ったものの、大の里と優勝を争った安青錦を除く大関陣は9勝6敗、8勝7敗と、かろうじて勝ち越した、という危うさ。
そのなかで藤ノ川や兄弟の朝紅龍・朝翠龍ら小兵力士が観客をわかせた。藤ノ川は一時、優勝争いに食い込んだ。美(ちゅら)ノ海との一番=写真=は星を落としたが、終わってみれば2人とも敢闘賞に選ばれた。
大相撲はNHKが生中継をする。晩酌は、前は5時半ごろに始めたが、最近は5時前には準備を終える。「早くすませて早く寝る」と、へ理屈をこねて始めるのには、大相撲はもってこいなのだ。
4時半にはテレビ桟敷に陣取り、力士のぶつかり合いに一喜一憂し、合間にグイッとやる。
私が地域紙の新米記者だったころ、週に1回、中面1ページを担当する大先輩がいた。
以前は炭鉱会社の広報担当だったとかで、定年後、好きな文章を書き続けるために再就職した。
「おチャ」ならぬ「おチャケ」の人で、社と同じ通りにある飲み屋で報道部長とよく飲んでいた。
そこへたびたび呼び出された。酔った勢いで大先輩の自宅へ同行し、二次会をやって泊まったこともある。
大相撲が始まると、決まって大先輩の顔が思い浮かぶ。平日は仕事があるから、大相撲はニュースで見るくらいだが、休みの日には夕方4時になるとテレビを見ながらおチャケを飲む。「これが楽しみなんだ」とよく言っていた。
「年寄り」と「大相撲」と「晩酌」の組み合わせは、このとき脳裏に刻まれた。それからすでに半世紀。大先輩の年齢を超え、後期高齢者と言われるところまできた。今、大先輩と同じことをしている。
若いころは、プロ野球はもちろん、陸上競技、水泳、プロレスその他のスポーツをテレビでよく見た。
今は大リーグもめったに見ない。なぜだろうと自問する。野球だと9回をやってようやく結果が出る。ほかの団体競技も勝ち負けが決まるまでに時間がかかる。
それに比べると、個人競技の大相撲はせいぜい4~5分で勝負がつく。しかも、これを何番も繰り返す。
この時間の短さと分かりやすさが、「見る」忍耐力が落ちた年寄りには向いているのかもしれない。
番付上位となれば、懸賞旗が何本も土俵を巡る。これを数えようとすると、土俵の屋根の天井からの映像に切り替わる。
上限は1回当たり60本とかで、今場所は大の里がトップの698本を獲得した。懸賞金は1本あたり7万円(手取り6万円)というから、金額にすると億の半分近い(某スポーツ紙)。
それに、と思う。カミサンが加わると、「まげが美しいね」などと、勝負とは違ったファッションの話になる。
そういえば、無精ひげはもちろん、ひげを生やした力士はいない。なにか厳しいおきてがあるのか――。連想ついでにそんな珍問までわいてきた。
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