2008年7月4日金曜日

「三春ネギ」の種子確保


夏井川渓谷(いわき市小川町上小川字牛小川)の小集落では、ネギは自家採種をしたのを栽培している。いわき市に隣接する田村郡(夏井川の上流~水源地帯)から伝わってきたらしく、地元の人は「三春ネギ」と呼び習わしている。地ネギである。

私も10年ほど前、集落のSさんに苗をもらって栽培を始めた。2、3年は自家採種に失敗したが、冷蔵庫に冷暗保存をするやり方を覚えてから、秋に種子をまくとちゃんと発芽するようになった。

今年はネギ坊主が未熟なまま枯れたので、秋にまく種子がない。何年か前にも同じようなことが起きた。原因はネギに対する愛情不足、というよりは過保護だった。

冬は寒いだろうと掘り起こして、北風除けの細工をしたところへ移し替えたら、かえっておかしくなったらしい。冬には地上部が枯れる品種なのに、枯れないように手をかけたのが裏目に出たのだ。

今年定植したネギ苗のうち何本かを残せば、来年の6月にはネギ坊主ができる。それから種子を採ればいいのだが、今年の秋にまく種子がないのはなんとしても悔しい。

Sさんの奥さんに「ネギ坊主が余っていたらもらえないだろうか」と言ったら、「種子を採っておくから」という。その種子を先日、奥さんがわが週末の埴生の宿「無量庵」へ持って来てくれた。花茎が倒れてネギ坊主が土をかぶったために、土も一緒、ごみも一緒だ。それで支障はない。

平に住む篤農家のSさんから種子をきれいにする方法を聞いているので、自宅へ種子を持ち帰って、早速、それを実行する。

まずボウルに金ザルを重ね、ごみや土と一緒にネギの種子をザルにあける。そこへ水をたっぷり張ると土はボウルの底に沈み、種子はザルの底に残る。中身のない種子は軽いので浮いてくる。その種子は発芽しないから、容赦なくごみと一緒に捨てる。

あとは新聞紙に濡れた種子を広げ、一晩軒下に置く。朝にはサラサラに乾いている=写真。次にするのは、乾いた種子を乾燥剤と共に空き缶か空き瓶に入れて、秋の種まき時期まで冷蔵庫にしまっておくことだ。

昔ながらの農家と違って、プレハブと似たような家では、夏場はかなり室温が高くなる。ネギの種子は高温と湿気に弱い。だから乾燥剤を入れて冷蔵庫へ、というわけだ。

そこまで終えると、これでひとまず「三春ネギ」のいのちを切らさずにすんだ、という安心感が広がる。「三春ネギ」の黒い種子は、私にとっては農家の種モミのようなものだ。主(水稲)と副(野菜)の違いは、もちろんあるが。

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