田村市船引町永谷の山林で5月19日、ツキノワグマが捕獲されたというニュースには仰天した。同じ市の、船引の隣町で生まれ育った。グーグルアースで調べたら、永谷地区はJR磐越東線磐城常葉駅の西方ではないか。
ある年の春、実家からの帰り、船引町から国道349号に入って「小沢の桜」を見た。その先に永谷地区がある。
永谷地区の西端を磐越道がかすめる。それよりちょっと西側を県道郡山大越線が延びる。いわき市から国道49号を利用して郡山市立美術館へ行くと、だいたいはこの県道~国道349号を経由して帰る。
永谷地区は「田村富士」と呼ばれる片曽根山(718メートル)の南麓に広がる。水田地帯を小丘群が取り囲んでいる。阿武隈高地の分水嶺から西側に特有の、穏やかな「準平原」だ。
クマはイノシシ用の罠(写真を見る限り箱罠だろう)にかかっていた。皮肉といえば皮肉だが、それで阿武隈高地にもクマが生息していることがわかった。「阿武隈の山にはクマはいない」。昔からそういわれ、私もそう思ってきたが、最近はあちこちで姿や足跡が目撃されるようになった。
いわき市でも去年(2020年)6月11日、川前町下桶売字荻地内の吉間田集会所付近で目撃された。夕刊で知った。翌日には「直径6~7センチの足跡」が確認された。拙ブログでも取り上げ、夕刊にも転載された。ほかに2件、やはり拙ブログから時系列で「阿武隈のクマ」の情報を抜粋してみる。
・2012年7月31日=田村郡に接する川前町上桶売字大平地区でツキノワグマの足跡が確認された。夏井川渓谷の隠居からは、車で20分ほど山に分け入ったあたりだ。隠居に回覧チラシ「クマにご注意」=写真=が差し込まれていて、クマの出没場所が近いことを実感した。
相双地区を中心にずいぶん前から目撃情報が相次ぐようになった。田村市の北方、飯舘村には「クマ出没注意」の看板もあるという――。
・2015年9月4日=フェイスブックに田村市復興応援隊が「注意!クマ出没!」の記事を投稿していた(原文では漢字の熊)。「9月4日に都路町内でクマの目撃情報がありました。発見された場所は岩井沢字楢梨子(ならなし)地区です。足跡も確認されており存在は間違いないようです」
岩井沢小・中学校のホームページから、次のようなことが見えてきた。同日午前6時10分ごろ、国道288号の新田バス停付近に体長1メートルほどの子グマが現れた。足跡もあった。近くに親グマがいるかもしれない。
いわき市のわが家と田村市常葉町の実家を往復するときに、行きか帰りのどちらかに同国道を利用する。途中、同市都路町岩井沢地内で葛尾村方面へ国道399号が分岐する。その交差点から東の太平洋側へ1.5キロほど寄ったところに新田バス停がある――。
9年前の回覧チラシにはこんなことが書いてあった。「クマは夜間や朝夕など活発に行動するため、特に注意が必要。朝早くの農作業等は、必ず音のするものを身につける」
そもそも田村市でイノシシが増えたのは原発事故以後、耕作放棄地が増え、周辺市町村の避難などが行われたことが大きい。そこへクマが現れた。いわき地方でもニホンカモシカの目撃例が増えている。今の阿武隈は昔の阿武隈ではなくなった、ということか。
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