2010年7月6日火曜日

緑の破れ目


夏井川渓谷はすっかり青葉に覆われた。春先にはあちこち、急斜面に倒れて引っかかっていた赤松の枯れ木が目についたが、木の芽が吹くと、若葉の陰に隠れて見えなくなった。立ち枯れの赤松も途中まで緑に包まれている。緑のカーテンが冬まで無残な姿を隠してくれるだけでもありがたい。

岩盤の上にたまった薄い土壌に赤松が生え、モミが生え、そしてツツジ類その他が生える。それが渓谷の主な樹種。〈あれっ、緑のカーテンに破れ目ができている。岩盤が見える〉。最初から岩盤がむき出しになっているところはともかく、緑で覆われたところに穴があいたようになって岩盤が見えるのはめったにないことだ。それが目に入った=写真

そばまで行って見たわけではないから何とも言えない。が、“定点観測”を重ねてきた経験から、なにかおかしいぞと肉眼が反応した。落石ではなくて、岩盤から土砂が崩れ落ちた、そんな印象だ。双眼鏡をのぞいて、いっそうその感を強くした。

落石ならば岩盤の表面が赤茶けている。空気にさらされた岩盤は白茶ける。岩盤は白いまま。茶色く見えるのは土砂、そして枯れ木が乱雑に横たわっている。立ち枯れた赤松が幹の途中から折れ、ほかの木々に引っかかった状態で倒れているのも見えた。最近の雨で崩れたのだろう。

渓谷の赤松は、大樹があらかた枯れた。白い卒塔婆のように立っている。枯れたら一気に倒れるのかと思ったが、そうではない。こずえから徐々に折れていく。その過程で幹が折れ、土砂が崩れたのだろうか。破れ目がこれ以上広がらないといいのだが。

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