2010年7月13日火曜日

マメダンゴ再び


去年の今ごろ、マメダンゴ(ツチグリの幼菌)が夏井川渓谷の無量庵の庭で採れた話を書いた。

今年も発生するはず――6月下旬から、週末、無量庵へ行くたびにてのひらで苔に覆われた地面を探った。既にツチグリは地上に姿を現しつつある。外皮が裂け、球状の膜の先端から胞子を放出したあとは、湿っているとヒトデのような姿になる。が、梅雨でも乾燥の度合いが高いのか、丸まっているものが多かった。

とはいえ、苔の下にそれらしい“球状”の反応はなかった。7月4日も同じ。11日は? 〈あれれっ!〉。苔や土の間からマメダンゴが頭をのぞかせているではないか。よく見れば、至る所にある。指でえぐると、たちまち20個ほどが集まった=写真。さらに20個ほどを採った。

去年の経験でいえば、ここまでくるともう食に適さないものが多くなっている。二つに割ると既に胞子が形成されていて、“黒あん”状態になっているのだ。今年のマメダンゴも38個がそうだった。1個が“白あん”、もう1個がほぼ“白あん”。それ以外は捨てるしかない。

が、どうにもあきらめきれない。外皮のコリコリだけでも味わいたい。“白あん”のほかに、10個ほど中の“黒あん”をこそげ取り、外皮だけを残して汁の身にした。

キヌサヤエンドウ、新ジャガ、そしてマメダンゴ――というのが、記憶にある阿武隈高地の定番みそ汁。いや、梅雨時にしか味わえない“奇食”だ。マメダンゴは、ほんとうは外皮も白いはず。すっかり黒ずんだ外皮には目をつぶり、気持ちだけマメダンゴのみそ汁を味わった。

今年の教訓はより動物的だ。イノシシの嗅覚にはかなわないが、それに近いような形でてのひらの感覚を研ぎ澄まさないといけない。でないと、白く小さな幼菌は手に入らない。

あるいは、イノシシの吻(ふん)の代わりに、潮干狩りのときに用いる熊手のようなもの(代用品としてば櫛でもいい)、それで土の中を探る――といったことを考えないと、本物の味は得られない。ゴムのように硬い外皮をかみながら思ったのはそのことだった。

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