2010年11月3日水曜日
コーヒーと糠漬け
コーヒーをたてるからと言われて、ある家に夫婦で出かけた。相手は人生の先輩、おしゃれな「お姉さん」格、いや主婦の目で政治や経済をシビアに語る「姉ご」分だ。2時間ほどよもやま話をした。
甘い食べ物と一緒に、ハヤトウリらしい漬物が出た。聞けば、糠漬けだ。一年を通して休みなく糠漬けをつくっている。結婚と同時だというから、その家の糠床の歴史は50年を越える。糠床が嫁入り道具の一つだったのだろうか。――コーヒーを飲みながら、糠漬け談議が始まった。
わが家は、夏場は糠漬け、冬場は白菜漬け――とあっさり分けてきた。で、その日(きのう=11月2日)の昼前、今季最初の白菜を割って干して、塩をまぶして甕に仕込んだ=写真。
漬物を夏(糠漬け)から冬(白菜漬け)に切り替えるわけだから、糠床は1週間後にはたっぷり塩を加えて冬眠させよう――この何年かはそうして切り替えてきた。が、「お姉さん」は白菜漬けももちろんつくるが、糠漬けもつくり続ける。交互に食卓に出すという。そうか、冬眠させなくていいんだ。わが家でも見習おう。
夏目漱石の孫の家(半藤家)の糠床は曾祖母、祖母、母、本人と江戸時代から受け継がれてきた。「300年は続いている」という文字が頭に刻まれていた。その話をした。ついでに糠床の栄養分としてカレーの残りや煮汁、塩サケの食べ残しなどを加える、とも。
カレーの話に「お姉さん」は仰天した。300年の糠床にも目を丸くした。カミサンも内心、300年はオーバーではないかと思ったという。
気になって本(半藤末利子『夏目家の糠みそ』)のコピーを探した。あった。テレビの取材陣がやってきたときの話が書いてある。嵐山光三郎氏が糠漬けのカブをぽりぽりやりながら、夏目~半藤家の糠床の歴史を聞く。「100年は続いている訳ですね」「いいえ、もっと。300年以上は続いていると思いますよ」。誇張ではなかった。
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