2012年4月18日水曜日

ワサビ消える


夏井川渓谷の牛小川。人間は、V字谷の緩やかな左岸斜面、太陽の光が降りそそぐところに暮らしている。集落周辺にはいろんな山菜が顔を出す。ピンポイントながら、ワサビが花をつけた=写真。そのワサビが盗られた。花をつけはじめたと思ったら、一週間後には消えていた。

誰が盗ったか、だいたいは見当がつく。「盗った」というより「採った」としか思っていない人――イノシシより始末に負えないニンゲン。ジイ・バア族のだれかが見つけて、根こそぎ摘んでいったのだ。

これまでの被害経験からすると――。若い世代は自生のワサビなどには見向きもしない。花が咲いているのが目に入ったとしても、ただの花で終わる。第一、山は放射線量が高いと思っているから、アカヤシオの花が咲いても見に来る人は少ない。先の日曜日(4月15日)、無量庵の隣の「錦展望台」に姿を見せたのはほとんどがジイ・バアだった。

若い世代と違ってジイ・バアはワサビだとわかると張り切る。周りに家があってもなくても、目の前の獲物にとびかかる。ライオンになる。

昔、無量庵の樹下にハワサビを植えた。1年後には盗られた。おととし、Tさんからタラボの苗木10本をもらい、道路際の菜園の隅に植えた。2年目の去年、原発震災から1カ月余の4月下旬、タラの芽がきれいにカットされてなくなっていた。今年の春日様の祭礼でその話をTさんにした。「てっきり本人が摘んだと思ってた」

去年は、夏井川渓谷へアカヤシオの花を見に来るような人間はいなかった。が、山菜採りは別だった。花よりも、放射能よりもタラボ――人の庭にまで入り込んで採るのは窃盗と同じではないか、と思ったものだ。今年、タラボは背伸びしても手が届かないほど上空にある。まだ硬い。

きのう、用事があって小川へ出かけ、帰りに石森山に寄った。ワラビ狙いかどうかはしらないが、狭い林道に車を止めて土手をなめるようにしていたのはバア・バアだった。バア・バアは元気がいい。

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