10日ほど前のいわき民報。「市にイノシシ被害対策を陳情 三和町区長会」の記事と、「イノシシ出没」と題した<くらし随筆>が同じ面に載った=写真
三和町はいわき市の北西部、阿武隈の山里だ。そこの区長会が①イノシシ捕獲報償金の拡充と報償金・交付金の手続き合理化②農地におけるイノシシ防護対策の拡充――を市に要望した。随筆では、筆者が平地の山際にある福祉施設周辺でのイノシシ被害に触れている。2つの記事は、市街をのぞいてイノシシ被害がいわき全域で日常化していることを示す。
わが家から見える丘の向こうの農村部では、狩猟免許を持つ人が箱ワナ猟でイノシシを捕獲している。報償金は1頭1万円。解体して生ごみとして清掃センターへ搬入すると、後日、市から報償金が支払われる。結構な数を捕獲したそうだ。
いわき市のイノシシ捕獲報償金交付制度は平成24年2月に始まった。今年度は1500頭の予定だったのが、市議会11月定例会で900頭の増加が決まった。イノシシ被害も増えているが、ハンターも増えつつあるのだろう。
イノシシの記事から3日後、東京から大学生が現地学習にやって来た。夜のコンパに加わった。引率の先生と飲んでいるうちに、イノシシ狩りの話になった。カナダ人の准教授が若いときにイノシシ狩りを体験したという。昔、職場を共にした後輩の記者が「イノシシ狩りをしたい」と真顔で応じた。
後輩はサーフィンをやり、水中に潜って写真を撮る。自然のなかに生身の自分を置くことで生きる実感をつかむタイプだ。イノシシを狩るには、まず講習を受けて狩猟免許を取る必要がある。ほんとうに取るのではないか。
事故を起こした1Fから20キロ圏内はおろか、50キロあたりまでのいわき市や田村市などからイノシシ情報が入るたびに、彼らが人間の世界を包囲しているというイメージがふくらむ。そんな緊張状態の反映として、野性の強い人間の内部に狩猟本能が目覚めつつある、と解釈できないこともない。
一種のサバイバル感覚でイノシシと対峙する――そんな人間が身の回りに増えてくる予感がある。
0 件のコメント:
コメントを投稿