台風7号は昨夜(8月17日)、北海道で温帯低気圧に変わり、オホーツク海を北上へ――という情報に接して、あの穏やかな海にも白波が立っているにちがいないと、ついサハリン(樺太)の東海岸にまで想像がおよんだ。
8月初旬の旅でサハリンの自然に触れた。といっても、ユジノサハリンスク(豊原)~スタロドゥブスコエ(栄浜)~ボストチヌイ(元泊)までざっと150キロの国道沿線(東海岸)の風景を見ただけだが。
最初の50キロは内陸山地の峠越え、残りは延々とオホーツク海沿いを往復した。ヤナギランの話を前に書いたが、その延長で動植物について印象に残ったことを紹介しておきたい。
日本語ガイドのミハリョフ・ワシリーさんとはウマが合った。どうやらサハリン有数の「インタープリター」(自然解説者)のようだった。動植物はもちろん、菌類も「トドマツの林にはハナイグチが出る」といったように、和名で教えてくれる。こちらも和名で質問する。
意外だったのが「マス釣り」の提案だった。元泊から10キロほど北上したところに川がある。ワシリーさんがいうのを「カシコ川」と聞き間違っていたが、日本へ帰って調べたら「樫保(カシホ)川」らしい。いわきでいえば、大久川か滑津川くらいの川だ。
川はグーグルアースで確かめられる。河口の近くを国道が走り、そばに立派な鉄橋がかかっている。そのすぐ上流でワゴン車の運転手がルアー釣りをしてみせた。たちまちカラフトマスがかかった=写真。大きさは50センチ前後か。この魚が濁った川にひしめいているようだった。
ではと、仲間の一人が挑戦した。かかったかなというあたりで、スイーッと針を動かしたために空振りに終わった。運転手の釣ったマスはリリースした。サハリンの川の豊穣を思った。
元泊は、今はひなびた漁村といった感じだ。沿岸定置網がところどころに見られた。ワシリーさんが村の偉い人に話をつけて、港にあるカラフトマスの加工場を特別に見せてもらった。写真撮影は不可だった。従業員がずっとついて来た。加工の仕方がわかりやすい。頭と尾、内臓をとって身を保存するだけ。あとは海に帰す。カモメたちが群れ集まっていた。
海から帰って来るマスを川で見、釣りを見、サハリンの観光の本質はここにあるように感じた。エコツーリズム――片田舎のディープなサハリン行だからこそ体験できた「マス釣り」だった。
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