「これはなに?」=写真。アザミに似た花を咲かせつつある大柄な植物だ。「野生のゴボウ」と日本語ガイドのワシリーさん。道端や林縁などに群生していた。人里にも普通に生えている。大きな葉がなにかに似ているとは思っていたのだが……。日本では根菜。でも、ロシアでは根を食べる習慣がない。雑草だ。
ハナウドも大柄な雑草だった。内陸部でも沿岸部でも、道路沿いに連続して散形状に花をつけていた。ワシリーさんは、「家畜(牛)のえさ用に(シベリア)大陸から持ち込まれた。今は問題になっている」といった。在来植物をおびやかすほど繁殖している、ということだろう。
一方で、人々の暮らしに欠かせない植物もある。「イワツツジ」がそのひとつだ。夜はユジノサハリンスクの街なかでビールを飲みながら食事をした。その雑談のなかで、ワシリーさんの口から「イワツツジ」という言葉が飛び出した。シロップやジュースにして飲むのだという。
イワツツジ? 夏井川渓谷のアカヤシオも、地元の言葉(方言)で「イワツツジ」だ。それか。いや、そうではない。よく聞くと、コケモモに似た灌木(の実)のことだった。樺太アイヌの間では「エチイチャラ」、通称「アタマハゲ」だとは日本へ戻って、検索してわかった。
北海道日本ロシア協会編のサハリン平和の船事業報告集『ふれっぷす』第30号(2015年版)に、元泊の北隣の知取(しるとる)町がふるさとの男性が書いていた。道端で売られていた木の実(コケモモ、アタマハゲ)を見て、「子供のころ、食べた甘酸っぱいアタマハゲを兄弟たちにお土産として、買いました」。われわれが利用したのと同じ海沿いの国道だろう。この夏も露店が各所に出ていた。
男性の姉たちは「家の裏山の山間辺から、よく山にのぼり、フレップ採りと山菜(ラワンフキ、ワラビ等)採り、特にキノコで大きいムラサキシメジをとった」。フレップはコケモモのこと。北原白秋の樺太紀行文集『フレップ・トリップ』(岩波文庫、2007年)の「トリップ」も、同じような実(エゾクロウスゴ?)だとか。ラワンブキはアキタブキの仲間だ。大陸同様、島にも自然の恵みがあふれている。
「イワツツジは山奥に群生している」とワシリーさんがいった。「シロップはウオツカや水に加えて飲む。ウオツカを飲みすぎても、次の日、頭が痛くならない」。二日酔い防止になるということだろう。そしたら「アタマヨシ」でもよかったのに、「アタマハゲ」とはなぁ――なんて、あれこれ自他の顔と頭を思い浮かべながら愚考した。
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