いわき市平の神谷(かべや)地区は、事故を起こした1F(いちえふ)からは40キロ前後、冷温停止状態の2Fからは30キロ圏内にある。2Fを起点にすれば、およそ市の北半分がこの圏内だ。
東日本大震災から1年8カ月後の平成24(2012)年11月、いわき市は福島県地域防災計画で「UPZ(緊急時防護措置を準備する地域=原発からおおむね30キロ)」に指定された。原子力災害に対する防護措置を講じる必要があり、住民の意識づけも兼ねて、昨夜(8月23日)、神谷公民館で地区の課題を知るための原子力防災訓練(ワークショップ)が開かれた=写真。
いわき市は原発事故を想定した地域防災計画を策定中だが、その骨格となる「広域避難先」がすでに決まっている。平地区は「南」が茨城県の石岡・つくば市など8市1町。ただし、東海村に原電があるのでその事故も想定して、「西」への避難を考慮しなければいけない。こちらは新潟県などを避難先に調整中だ。
今回は最初の図上訓練(自助・共助・公助でいうと共助の部分)でもあり、「情報伝達」と「避難」の二つをテーマに、いわゆるKJ法で課題を整理した。神谷地区8行政区のうち半分の4区が参加した。残り4区の訓練は今夜、同じ場所で行われる。
役員や民生委員ら4~7人が区ごとに班を編成し、付箋に課題を書きだしたあと、内容が似たものをグループ分けしてキーフレーズを抽出した。
たとえば「情報伝達」では①情報の入手に不安②災害弱者の把握が難しい(個人情報が壁になっている)③連絡態勢ができていない、「避難」では①もっと近くに集合場所がほしい②ルートが不明確③共助態勢が決まっていない――などが挙げられた。隣組に入っていないアパートの住人への連絡・避難の呼びかけはどうするのか。これも課題に書き加えられた。
神谷地区の一時集合場所は平六小、同二中、市北部憩いの家(北部清掃センター内)だが、二中は高台にある。大型バスは入れない。二中が集合場所の区からは「集合場所には適さない」といった声が出た。市の机上プランは地域の実情に合わせて修正されるが、いったん決まった集合場所を変えられるかどうかはわからない。
3カ月後の師走には、同じように避難の課題解決のための方策を探る訓練(ワークショップ)が開かれる。5年余前のパニック(原子炉建屋爆発、屋内退避・食料枯渇、自主避難)は二度とごめんだが、万一には備えなければならない。今回初めて、区の役員間とはいえ広域避難のための課題共有がなされた。
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