平北白土の篤農家・塩脩一さんは自家採種で地ネギを栽培している。千住系の「いわき一本太ネギ」だ。
20年ほど前、私が夏井川渓谷の集落でやはり地ネギの「三春ネギ」を栽培し始めたころ、いわきのネギの歴史や栽培方法を聴きに行った。塩さんの畑のわきに捨てられていたネギ坊主をもらい、種を採って栽培したこともある。
昔の「いわきネギ」と今の「いわきネギ」は別物――これが最初に教えられたことだ。病気と風折れ対策に重点がおかれた結果、今のいわきのネギは、見た目はテカテカして太く、白いものになった。食べては硬く、甘みが少ない。塩さんはそうしたネギを消費者=市場が求めるようになって、在来のネギの出荷をやめた。
種を採ったあとの“選(よ)り分け”法は「目からうろこ」だった。実用書には、種殻やごみはフーフーやって取り除く、とある。これが、なかなかうまくいかない。種まで飛ばしてしまう。種を水につけることを、塩さんに教えられた。
ステンレス製のザルに種もごみもまとめて入れ、水を張ったボウルにつける。すると、種殻や中身のない種は浮く。ザルのすきまからは細かい砂やごみがこぼれ落ちる。ザルの底に残った種だけを新聞紙の上に広げて一晩干せば種は乾いている。それを乾燥剤とともに小瓶に入れて冷蔵庫で保管する。
「三春ネギ」は10月10日に種をまく。「いわき一本太ネギ」は4月10日にまく。塩さんの畑からネギ坊主をもらってきたのは、まだ「ネギは秋まき」と思いこんでいたころだ。それも秋にまいたら、春にネギ坊主ができた。塩さんから「秋にまいたらネギ坊主ができる、春まきだよ」とアドバイスされたのはそのあとだった。
車ですぐのところに、塩さんがよく言っていた白土の種苗店が引っ越して来た。「いわき一本太ネギ」の種を売っていたので、勢いで買った。日曜日(4月9日)に苗床をつくり、種をまいた=写真。こちらはネギの生態観察を兼ねて自宅で栽培する。
そろそろ種まきの準備をと考えていたころ、塩さんの孫でもあるいわき地域学會の若い仲間がやって来た。塩さんは元気に畑仕事をしているという。今年も10日にネギの種をまいたことだろう。
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