2017年5月10日水曜日

家の庭のいのち

 このところ毎朝夕、ときには日中も、庭に出て緑をながめる。パソコン画面と向き合って疲れた目には、若葉がいい目薬になる。漫然と見ているわけではない。歩きながら、あるいはかがみこんで、目を凝らす。変化がわかる。虫を取り、草を摘む。
 晩秋、生け垣のマサキの枝にガの一種のミノウスバが卵を産み付ける。毎年、ゴールデンウイークごろにふ化する。それが、今年は4月上旬に始まった。マサキの新芽の発生と同時だ。

新芽はやわらかい。幼虫はかたまりになって新芽を食べて育ち、やがて生け垣全体に散開して古い葉も食べ尽くす。そうならないように、ふ化したばかりのところを枝ごと除去する。波状的に発生する。今年はこれまでに、3日おきくらいに生け垣を見て回った。もう大きく食害されることはないだろう。

 台所の南側の軒下に、昔野菜の「いわきねぎ」の苗床を置いた。水やりがいいかげんだったため、発芽が遅れた。ネギの代わりに雑草ばかり芽生えた。ネギの新芽が日陰にならないよう、毎朝夕、雑草の新芽を摘む。

 ネギの発芽のかたちがおもしろい。黒い種の殻を破った根はいったんヘアピンのようなかたち=記号の「∩」に近い=で地上部に姿をあらわす(「∩」は主に数学の確率に用いられる記号で、「キャップ」というらしい。「キャップ」あるいは「あんど」と入力すると、この記号が現れる)。
 
 やがて、根の部分は下へ下へと向かい、もう一方の茎の部分は上へ上へと伸びる。地上から離れた芽は最初、黒い殻をかぶったままで「?」のようなかたちになる。それから少し過ぎてシャキッとなりつつあるところがこれ=写真。殻は間もなく脱落する。

 ミョウガタケ(ミョウガの新芽)も出てきた。例年より少し遅い。もう少しで食べられる、と楽しみにしていたら……。カミサンが生け垣の剪定をしているうちに踏んづけた。カミサンは花、私は野菜。関心が違っている。金子みすゞの「見えぬけれどもあるんだよ。/見えぬものでもあるんだよ。」ではないが、ミョウガタケの存在が頭になければ、そこにあっても見えない。
 
 それよりなにより、庭木の下のあちこちにモグラ塚ができている。人間はそれを踏んづけながら歩くしかない。モグラはなにかに追いつめられて、わが家の庭まで来たのだろうか。
 
 そうだった。庭の花壇のへりに食菌のアミガサタケが頭を出していた。それに気づいたのは、ほぼ1カ月前の4月中旬。以後、ときどき観察を続けていたら、ある朝、ナメクジが頭をかじっていた。それからしばらくして、イカリソウの葉に覆われた。葉をかき分けて見ると小さくなっていた。
 
 ミョウガタケは今の時期にしか口にできない土の味だ。包丁で根元から切り取り、刻んで味噌汁の具にしよう――けさ見たら、剪定枝が積んであった。ミョウガタケの姿は目をこらさないとよくわからない。

0 件のコメント: