週に1回、いわきニュータウンへ出かける。国道6号の常磐バイパスを利用する。道沿いの小丘群に点々と黄色いかたまりが見られるようになった。木の名前はわからない。が、スダジイやアカガシなどの花だろう。
ふだんは主に夏井川流域内を動き回っている。いわきの海岸~平地(暖温帯)は、シイ・カシなどの照葉樹が目立ち、阿武隈高地(冷温帯)は夏緑樹、その中間の夏井川渓谷(中間温帯)はモミ・イヌブナなどが優先する。全山緑となったこの時期、黄色い花のかたまりでシイ・カシ類の分布域がわかる。
海岸寄り、田んぼの中の小集落を照葉樹が守っている。樹冠を黄色く覆う花がブロッコリーのようだ。内陸=平地のどんづまり、小川の町は、集落の裏山が小丘になっている=写真。メッシュが入ったように黄色いのは、シイ・カシの花。その奥、二ツ箭山は中腹まで人工の杉林が多いこともあって、黄色い点々は見られない。ここらへんが暖温帯の終わるところ、中間温帯との境目、あるいは冷温帯の始まるところなのだと知る。
若いころ、年に何回か阿武隈の植物を見て回る「山学校」に参加した。いわきに住む植物研究の第一人者(元高校教諭)が先生を務めた。植物の南限・北限を意識するようになった。キノコにも南方系と北方系がある。いわきでは、その両方が見られる。海もしかり。黒潮と親潮がぶつかる“おいしい海域”だ。
釣りをしないので、大きい声ではいえないのだが、自然を丸かじりするのにいわきほど面白いところはない。
自然は最大・最強のメディア、そして最も正直なメディアだ、と私は思っている。自然が発する情報に目を凝らし、耳を澄ます。鼻で嗅(か)ぎ、舌で確かめる。暑い、寒い、荒い、穏やか、きれい……。それらをベースに、人間と人間の間を飛び交う情報を吟味する。自然にはファクトがあるだけ。フェイクは通じない。
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