2017年5月9日火曜日

造花の妙

 花の写真を撮っても、ルーペで観察するところまではいかない。美は細部に宿る、あるいは細部に違いがあらわれる、といわれても、それは専門家にまかせて成果だけをもらうレベルにとどまっている。
 デジカメで接写を覚えてから、少し変わった。撮影データをパソコンに取り込むと、ルーペ以上に細部がわかる。

 去年(2016年)の晩秋の夜、息子から電話があった。「(小名浜から拾ってきた)子猫が死んだ。庭に埋めていいか」。スコップで穴を掘って待っていると、2人の孫もついて来た。このとき、カミサンが子猫のなきがらにチューリップの球根をひとつ添えた。
 
 そのチューリップが春になって茎をのばし、花を咲かせた。孫たちが来たとき、「ほら、チューリップが咲いたから、子猫は天国へ行けたよ」といった。

私は、球根を埋めたことを知らなかった。ではと、接写の練習のつもりで花を真上から撮った=写真。

えっ、なんだ、これは――パソコンで撮影データを拡大したときに、その生々しさに驚いた。真ん中にあるのは、輪のないベンツのマークのようなめしべ。その周りを6本のおしべが囲む。真っ赤な花びらをバックにしているから、よけい肉感的だ。
 
 夏井川渓谷や大久川渓谷に自生するアカヤシオの花も、接写し、データを拡大すれば、西日本に分布するアケボノツツジとの違いが簡単にわかるはずだ。
 
 いわき地域学會図書5『夏井川流域紀行』(平成元年刊)に、いわきの植物学の先生・湯澤陽一さんが書いている。

「残念ながらアケボノツツジは東北地方はもちろん、関東地方にも産しない。(略)紀伊半島を北限とし、四国・九州に分布する暖地系の植物だ」「アカヤシオは花柄にみつに腺毛があり、雄しべのうち半分の5本に白毛がある。アケボノツツジは、すべて無毛なので、この点に注意すれば簡単に区別できる」
 
 キノコは顕微鏡で胞子を見るのが基本――いわきキノコ同好会の仲間に学んだことだが、私はそこまではいかない。代わりに、みんなの研究成果をいただく。たまたま撮った菌類や植物、あるいは虫を、ルーペ代わりにパソコンで拡大してながめる。いつも造化の妙を思う。

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