「待ちあぐねて煙草(たばこ)に火をつけると/電車はすぐ来る。」。詩人・作家清岡卓行の詩<風景>の一部だ。作家金井美恵子が19歳で書いた、デビュー作でもある小説「愛の生活」(太宰治賞次席)のなかで引用した。それを、18歳の少年が頭に刻んだ。以来、半世紀。「AをするとBがおきる」式の応用が増えた。
煙草に関する環境は、詩が書かれたころと一変した。ホームで喫煙し、電車が来るとあわててもみ消し、線路とホームの間にポイ捨てする。よく見かけた光景だが、今はホームも含めて公共の場では禁煙が普通になった。
夕方、飲みに行くとき、バスを利用する。「待ちくたびれて煙草に火をつけると、バスはすぐ来る」。予定の時刻になってもバスが来ない。一服するか。停留所でプカッとやりはじめると、バスが姿を現す。20年も昔の記憶だ。
このごろは、「スーパーのレジカウンターに並ぶと、買い忘れたものを思い出して列を離れる」といったフレーズが頭をよぎる。カートを押す運転手兼荷物運搬人の私ではない。財布を持つカミサンのことだ。スーパーに10回行けば6回はそうなる。
買いたいものは全部かごに入れた、だから、レジカウンターの列に加わったはずなのに、すぐいなくなる。足りなかったものは缶ビール1個のたぐいだ。カネもカードも持ってない人間は、前の客が早く精算をすませるとあわてる。後ろの客に順番を譲ったこともある。
おととい(7月21日)、マルト草野店=写真=へ行ったときもそうだった。買い物かごがいっぱいになった。レジカウンターに並びかけたら……。やはり、駆けて行った。食品以外のコーナーに姿を消したから、消臭剤でも探したのだろう。カラ戻りした。たまたま前の客の買い物量が多かった。で、順番通りに精算できたが、レジカウンターに並ぶときにはいつもためらい、ひと呼吸おく。
男と女の違い? それとも、本人の性格? 体は大きいが、気の小さい私には、スーパーのレジカウンターはいつも「鬼門」にみえる。
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