2017年7月19日水曜日

ケリがいた

 若いころは、子どもを連れて森や河原、海岸へバードウオッチングに出かけたものだが……。今は、庭にやって来る鳥や、堤防・田んぼのあぜ道・山道などを車で移動しているときに目に飛び込んでくる鳥を、瞬間的に見るだけだ。
 毎晩、野鳥図鑑をながめ、日曜日ごとに鳥を見に野外へ出かけた。その経験から、身近な鳥に関しては鳴き声・色彩・飛んでいる姿・止まっている形(シルエット)で、おおよそ見当がつくようになった。それでも、自信を持ってこれだといえる種類は少ない。まだ見聞きしていない鳥がいっぱいいる。そのひとつが、ケリという名の水辺の鳥。
 
 日曜日(7月16日)昼前、夏井川渓谷の隠居で土いじりをしたあと、朝と同じく帰りに平下平窪の田んぼ道を利用した。青田のなかに一枚、湿って一部水が張られた休耕田がある。そこに脚の長いハトくらいの鳥が休んでいた=写真。通り過ぎようとしたとき、ちらっと視界に入ったので、5メートルほど車をバックして写真を撮った。

 家ですぐ図鑑に当たる。日本鳥類保護連盟の『鳥630図鑑』に似た鳥がいた。ケリの若鳥のようだった。ケリはチドリ目チドリ科、いわゆる「シギチ」(シギ科とチドリ科)の仲間で、留鳥だという。本州の東北~近畿地方の一部の水田や荒れ地で繁殖し、冬には広い水田や河原、干潟などで見られる、とあった。留鳥? 私は、自分の生活圏では見たことがない。

 念のために日本野鳥の会いわき支部の『いわき鳥類目録2015』に当たる。いわきでは留鳥ではなく漂鳥だ。「市内では春先と秋口に数回の確認記録があるだけです」。すると、どこかで巣立った若鳥が放浪中、平窪の休耕田で一休みしていた、ということになるか。
 
 そのどこかのひとつ、「棚倉町で繁殖中の個体に遭遇したことがありました。けたたましく『キリッ、キリッ、キリッ、キリッ』と鳴いて威嚇してきましたが、この鳴き声からケリと名付けられたとも言われています」。中通りから阿武隈の山を越えてやって来たのかもしれない。
 
「数回の確認記録があるだけ」なら、いわきでは希少種、写真的には特ダネではないか、なんて思ったのだが、データを拡大するとピンボケもはなはだしい。でも、今まで見たこともない鳥を見た、という喜びだけは大きかった。

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