2017年7月3日月曜日

エディブルフラワー

 土曜日(7月1日)の午前、いわき市立草野心平記念文学館で事業懇談会が開かれた。終わって、館内のカフェ&レストラン・スピカに移動して昼食をとった。出てきたのは「気まぐれランチ」というものらしかった。1枚の皿に雑穀ごはんやサラダ、グラタン、その他が載っている。中央に花が一輪添えられていた。
 詩人の長久保鐘多さん(勿来=元高校教諭)と同席した。長久保さんは昭和56(1981)年、福島県文学賞・詩の部正賞を受賞する。そのとき取材して以来のつきあいだ。今は事業懇談会で年に2回、ほかに文学者の講演会で顔を合わせる程度だが、現役のころは平の詩人や画家たちと一緒に飲むことが多かった。ランチが来るまで雑談した。共通の知人の「Aさんは?亡くなった」「Bさんは?亡くなった」、半分はそんな話になった。

 ランチに添えられた花は、私の場合は黄色、長久保さんのは朱色だった。秋のカツオの刺し身に生のキクの花が添えられることがある。口に入れる。それと同じで、私はためらいなく黄色い花を食べた。長久保さんは花を皿の端によけた。ただの飾りと思ったのだろう。

 そこからとんちんかんなやり取りが始まる。「花を食べるの?」「食べられるんじゃないの?」。料理を持ってきた女性に聞くと、これがまたあいまいな返事だった。で、女性が調理場へ聞きに行く。「食べられます」。長久保さんは驚き、かつ大いに興味を抱いたらしく、かみしめるように朱色の花を胃袋に収めた。
 
 テーブルに、食用花=エディブルフラワーの紹介文があった。それを長久保さんに示す。長久保さんはさっそく「エディブルフラワー」という言葉をメモした。詩的インスピレーションを受けたらしい。
 
 考えてみれば、フキノトウがそれに当たる。キュウリの花=写真=も食べられる。秋のミョウガの子も花ごと食べられる。菜の花はずばり、エディブルフラワーの代表ではないか。
 
 文学館では4月15日から6月18日まで、企画展「草野心平の詩 料理編」が開かれた。関連イベントとして、5月に「心平さんの胃袋探訪 創作料理の試食と解説」を開催、参加者はエディブルフラワーを載せたサンドイッチを試食したそうだ。心平は、花も南蛮味噌や醤油、蜂蜜、二倍酢につけて食べた。
 
 長久保さんは新聞のニュースやコラム、本、身近な人々の言葉や行為など、日常接したり見聞きしたりするものからインスピレーションを受け、哲学的な考察を加えて詩にする。「エディブルフラワー」もやがて詩になるのではないか。

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