2017年7月13日木曜日

「小さな出版社」

 ときどきツイッターで本が紹介される。既存の出版社のほかに、「ミシマ社」、あるいは「ミシマガジン」といったものがあることを知る。最初は三島由紀夫に関係するメディアかと“誤読”したが、そうではなかった。
 朝日新聞社ジャーナリスト学校が発行している「ジャーナリズム」7月号は、特集が「地方からニッポンを変える」だった。そのなかで「『中央―地方』のしがらみを離れ自由な出版の実践を模索」というタイトルで、ミシマ社代表の三島邦弘さんが文章を書いていた。まだ40代前半、若い人だ。

「いくらなんでも一極集中過ぎる、東京だけ繁栄していれば日本はいい、というのではいけない。風穴を開けなければ」。最初、東京で出版社を興した。東日本大震災を機に、地方での出版活動を実践する。今は、東京のほかに京都にオフィスを構えている。

 三島さんの文章を読んだ直後だった。日曜日(7月9日)、平・本町通りの「三町目ジャンボリー」(展示即売市)をのぞくと、前回6月から参加しているという「移動本屋 リードブックス」が店を出していた。

 品ぞろえが変わっている。三浦豊『木のみかた 街を歩こう、森へ行こう』が目に留まった。発行所は「ミシマ社京都オフィス」だ。店主はこれまた若い人で、「ミシマガジン?」と聞くと「そうです」という答えだった。なにはともあれ、ミシマ社の気風を感じるために読んでみることにした。「買い切り」なので定価通りの値段だった。
 
 本は100ページ弱と薄い。「コーヒーと一冊」シリーズ(コーヒー一杯を飲みながら読み切れる分量)の本で、キリ(桐)からエノキ(榎)まで、街に生える木15種類が紹介されている。一般にはなじみの薄いアカメガシワ(赤芽槲)も取り上げている。目の付け所がいい。
 
 次の日、カミサンが移動図書館で借りた益田ミリのマンガ『ほしいものはなんですか?』を手にしながら、「アラカシって木があるんだね」という。「あるよ、照葉樹」。アラカシは手を加えなければ大木になる。それが、常緑の生け垣として剪定されてそこにある。アラカシは一種の“人生訓”となって登場人物の心に生える。で、マンガの発行所を見ると、東京の「ミシマ社」だった。
 
 アカメガシワに戻る。この木は生命力が強い。アスファルトのすき間から芽生える。渓谷や河川敷、道端など、至る所に見られる。平の東部商店街の道端にあった若木は、そばに自販機を設けるときに切られたようだ。きのう(7月12日)確かめたら、根元しか残っていなかった。
 
 若い世代は本を読まないといわれる。いや、読んだり書いたりする若い人もいる。なんというか、30~40代の若い人たちが「中央―地方」という見方を超えて、「現に生活している場所が中央」ととらえるようになってきた、そういう人たちのなかに新しい読み手・書き手・編集者・出版事業者が生まれつつある、などと勝手に解釈して勝手にうれしくなった。

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