2024年7月30日火曜日

山は動く

                     
   アメリカの大統領選で民主党からは、現職のバイデン氏に代わってカマラ・ハリス副大統領が立つことになった。

共和党の候補であるトランプ前大統領とともに、選挙集会での発言がニュースになって世界を駆け巡る。

7月25日のニュースでは、ハリス副大統領のこんな言葉が耳に残った。「私たちは、団結すれば山が動くことを知っている。力を集めれば国は変わり、投票すれば歴史をつくることができる」(NHK

山は動く――。日本でもかつて、土井たか子さん(1928~2014年)が言っていたな。

昭和61(1986)年の衆参同日選挙で野党が惨敗し、石橋政嗣社会党委員長(1924~2019年)の辞任に伴って、土井副委員長が女性初の党首になった。

その3年後、平成元(1989)年の参議院議員選挙で「マドンナ旋風」がおき、自民党を過半数割れに追い込んだ。この与野党逆転劇を、土井委員長は「山が動いた」と表現した。

原典は、与謝野晶子が明治44(1911)年創刊の雑誌「青踏」に寄せた巻頭詩「山の動く日」らしい。

ただし、創刊号は未見、詩も引用する人間によって細部が異なる。もとは「そぞろごと」の詩の一部だったという。ここでは「ウィキソース」の「そぞろごと」に従う。

「山の動く日来(きた)る。/かく云へども人われを信ぜじ。/山は姑(しばら)く眠りしのみ。/その昔に於(おい)て/山は皆火に燃えて動きしものを。/されど、そは信じぜずともよし。/人よ、ああ、唯(ただ)これを信ぜよ。/すべて眠りし女(をなご)今ぞ目覚めて動くなる。」

女性が旧弊を打破して動けば、社会は変わる。平成元年の参議院議員選挙はその典型だった。

ハリス副大統領の「山は動く」は、選挙あるいは国内の団結を訴える文脈のなかで使われている。与謝野晶子の詩もまた、女性の連帯と行動を呼びかけるものだった。

ついでながらもう一つ、「大地動乱」にからむ話を。毎週、夏井川渓谷の隠居へ出かけるとき、小川の平地から二ツ箭山=写真=を仰ぐ。ここに二ツ箭断層がある。

この断層が動いたのは、以前は「新第3紀の後半」と言われていたが、今は「第4紀の後半」と評価が変わったらしい。

つまり、「2303万年~258万年前」から「258万年前~現代」に近づいた? 断層を境にして南側がずり落ち、その断層面が山の南西側に残っている、という。

3・11の巨大地震の影響で、4・11にいわき市の「井戸沢断層」近く(田人)でマグニチュード7.1の地震が発生し、それまでは「動かない」とされていた東隣の「湯ノ岳断層」(遠野~常磐)が動いた。

田人・遠野・常磐には「地表地震断層」と呼ばれるものが出現し、各地で崩落事故が発生した。

いわきの山よ、これ以上動かないでくれ――。比喩ではなく、現実に立ち返るとそういう思いになる。

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