2024年7月5日金曜日

モンテの「遺品」

                                 
 平の国道399号沿いに、中南米音楽の店「モンテビデオ」があった。今年(2024年)6月1日、50年の歴史に幕を閉じた。

 いわき駅前の飲み屋街からは少し離れている。最初からモンテで飲むか、あるいは駅前からタクシーで行くか――となるので、私がモンテのドアを開けたのは半世紀で10回あったかどうか。

 5年前、モンテのことをブログに書いた。この5~6月、旧投稿へのアクセス数が急増した。

モンテ閉店を知った人たちが、ネットで情報を探っているうちに、拙ブログにたどり着いたのだろう。中身を要約・抜粋する。

――2019年3月某日夜、飲み会があった。会場の近くに、中南米音楽の店がある。一次会が終わると、何人かその店に流れた。私以外は40代以下の若者だ。

店の名前は「モンテビデオ」。昭和49(1974)年に開店した。2階前面を黄土色のテントが覆っている。

私たちが入ると、ママさんがジプシー・キングスのビデオをかけた。フラメンコ系のアコースティックギターの音色が心地いい。

「パコ・デ・ルシアの音楽かと思った」というと、「パコのあとに(このグループが)出てきたのね」。ラテン音楽にはさすがにくわしい。

福島県川俣町は、今や日本のフォルクローレ(南米アンデス山脈に住む先住民を中心にした民族音楽の総称)のまちとして知られる。

同町のホームページによると、年に一度、「コスキン・エン・ハポン」という祭りが同町で開かれる。

アルゼンチンの避暑地・コスキンで、南半球の夏の1月、中南米の国民音楽祭が開かれている。その日本版を、同町の故長沼康光さんが中心になって開催した。

長沼さんらがフェスティバルを始めたのは昭和50年だ。「モンテビデオ」のママさんもこれに共鳴し、川俣町へ出かけたり、店を休んで長沼さんらと中南米へ出かけたりした。

ママさんはわがカミサンと中学校の同級生なので、若いときから知っている。「店を出してから、もう45年よ」。たぶん店内は当時となにも変わっていない。

ラテン音楽一筋に店を切り盛りしてきた。今も続けている。それはそれであっぱれな生き方ではないか。こういう店が“場末”にあるまちは楽しい――。

ここからは店をやめたあとの話。要らなくなったイス、テーブル、コーヒーカップ、グラス……。それらを引き取りに行った。

そのとき初めて、じっくり店の正面を見た。ドアとそばのエクステリアを包むように、白い壁が楕円に切り取られている。そうか、欧米の教会によくあるアーチ状の柱を模したものだったか。

カミサンの目当てはドアのそばにあった鉄柵=写真。ほかの鉄柵と含めて花壇の柵になった。

店名がローマ字綴りのタイルもあった。これは壁にしっかりはめ込まれている。後日、業者が来てはがし、ほかのものと一緒に廃棄してしまったという。

半「世紀の誤植」というか、「テ」が「チ」(TI)になっていた。ぜひ欲しいモンテの「遺品」だったのだが……。

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