2024年7月4日木曜日

大塚ひかり訳「源氏物語』

                               
 カミサンが移動図書館から借りた本の中に、特異なテーマのものがあった。大塚ひかり『うん古典――うんこで読み解く日本古典』(新潮社、2021年)。

 大塚さんは古典エッセイストだという。『源氏物語』も個人で全訳している。ちくま文庫全6巻で、こちらは総合図書館にある。とりあえず3冊を借りて併読することにした=写真。

 今年(2024年)の大河ドラマは『源氏物語』を書いた紫式部が主人公だ。毎週日曜日に「光る君へ」を見ている。

大塚源氏は、文体がほぐれていて軽い。「光る君へ」が放送されていることだし、この際、「世界最古の小説」を読んでみるか、という気になった。

 『源氏物語』については教科書レベルの知識しかない。古文を理解できないうえに、作品が長大だ。最初から敬遠していた。

 ところが、大昔のトイレ事情を扱った大塚さんの『うん古典』が全訳『源氏物語』への興味を呼んだ。大塚訳なら入っていけそうだ、多様な解釈のひとつとして――。

 大塚さんは、世間一般にいわれている見方、たとえば光源氏の栄光と没落、政治的野望と権力闘争の数々(ウィキペディア)といった話ではなく、貴族社会の「男と女の物語」として描いている。

 「『源氏物語』は、性愛が栄華の基盤になっていた時代の人間たちの物語である」(「はじめに)

 とはいえ、直截(ちょくせつ)的な表現は、原文にはない。代わりに、「当時の流行歌や自然や天候など、あらゆるものに託して『性』を『エロ』を、そこから生まれる『感情』を代弁させ、時に物語を牽引する伏線となっている」。

 訳と訳の間に「解説」(ひかりナビ)が入る。たとえば、最初の「桐壺」の章。「歌に宿、戸、山(月が入る)など何かを容れるものが出てくれば……」女を、「月(山に入る)など何かに入るもの、傘のようにさしたり、形状がそれらしいものが出てくれば……」男を暗示するのだとか。

桐壺は光源氏の母親で、ミカドの寵愛を受けた。が、嫉妬の渦の中で衰弱し、里に下って死ぬ。

 源氏は最高権力者の一人娘を妻に、申し分のない暮らしを送るのだが、心は満たされない。

「桐壺」のラストでは、そんな憂愁の貴公子が「光る君」と名付けられたゆえんを伝えて現実味を添える、とナビにはある。

 光源氏は近衛中将、大将、大納言、内大臣、太政大臣と進み、最後は准太上天皇という天皇に準じた待遇を受けるところまでいく。

 貴公子の女性遍歴と出世を重ね合わせた光源氏の一代記とでもいえる物語なのだろう。

わかりやすいといえばわかりやすいのだが、この年では全6巻を読み通す気力と興味を持続できるかどうか……。

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