夏井川渓谷の隠居の庭に、渓谷の植生とは無関係の園芸木が1本立っている。月桂樹だ。前はカミサンの実家の庭にあった。
移植した根っこから生えた「ひこばえ」が伸び、いつの間にか隠居の物置の屋根を超えた。
5月11日に土いじりを終え、地面を見ながら庭を一巡すると、たまたま見上げた屋根の上でホオノキの花が風にあおられていた。
ほかの木はどうか、と見れば、月桂樹になにかふわふわしたものがいっぱい付いている。白っぽい花がほんのり薄くピンク色に染まっていた=写真。
月桂樹の花を初めて見た。花そのものはとても小さい。あとで調べてわかったのだが、月桂樹の花は淡い黄色が一般的だという。
ならば、月桂樹ではない? ネットで調べ続けると、あった。月桂樹は雌雄異株で、雄花と雌花がある。黄色い雌花がやがてピンク色に変わることがある。そのピンクだろう。ピンクの雌花は珍しいそうだ。
15年前、月桂樹が「再生」した顛末をブログに書いた(2010年3月10日付)。それを現在形にして引用・抜粋する。
――カミサンの実家の庭に月桂樹が植えてあった。ざっと60年前、味噌蔵と物置の北側に種をまいたら発芽したという。
最初は日陰の身だったが、味噌蔵を移動すると光が差してぐんぐん生長した。幹の直径が根元で50センチほどにまでなった。
2007年に倉庫を建て替えた。そのとき、月桂樹が切り倒された。カミサンの頼みで根っこが掘り起こされた。
根っこは臼(うす)になるくらいに大きい。それを車で運んで夏井川渓谷の隠居に移植した。
枯れるかもしれない。が、月桂樹の生命力にかけたい。なにしろフランスにいる友達との思い出が詰まった木だ。
隠居では、日当たりのいい物置の前に穴を掘り、二人がかりで根っこを据え、土をかぶせて放置した。
すると翌年、根元から「ひこばえ」が伸び、若葉が芽吹いてきた。ひこばえは次々に現れて切り株を取り囲むようになった。
このままでは生長のエネルギーが分散される。育ちのいい枝2本を残してあとは切り取った。
月桂樹はクスノキ科の常緑樹だ。葉をいっぱいまとうようになった。葉をもむといい香りがする。
葉を乾燥させたものは、フランス語で「ローリエ」、英語で「ローレル」。香辛料=料理用ハーブとして広く用いられているという。強い生命力でよみがえりつつある「食材」の生長が楽しみになった――。
移植し、根付き、やがて一本立ちにしたのが、今では幹の直径10センチ余の若木になった。
ひこばえは切っても切っても現れる。それを切り続けていれば、やがては立派な2代目の月桂樹になるはずだ。花が咲けば実がなる? 新たな興味もわいてきた。
0 件のコメント:
コメントを投稿