2025年5月22日木曜日

移住のあいさつ

                                           
   フィリピン出身のエド君と彼女が久しぶりにわが家へやって来た。自分の車で東北を一周してきたという。犬の肉球をかたどったような「準チョコレート菓子」を土産にもらった。

箱には秋田犬の顔と足の肉球のイラストが描かれ、「あきたいぬ」の「いぬ」にひっかけて「いぬってる」とあった=写真。「祈ってる」という意味だろうか。

エド君はラーメン屋で、彼女は介護施設で働いている。よく休めたなと思っていたら……。間もなく神戸に移住するという。そのあいさつに来たのだった。

新しい職場は既に決まっている。彼女はホテルのフロントで、エド君は同じホテルの厨房で働く。

いわきを離れる前に、東北の地を自分の目で確かめたかったのだろう。猫の田代島、石巻、盛岡、男鹿(おが)半島などを訪ねたそうだ。

そもそもは雨がもたらした出会いだった。今から3年前の大型連休中のことである。

宵になって急に雨が降り出した。するとほどなく、若い男性がびしょぬれになってわが家(米屋)に飛び込んできた。「傘、ありませんか。あったら売ってほしい」。それがエド君だった。

カミサンが応対した。だれかが置いていった透明な「コンビニ傘」がある。そのなかの1本を進呈した。

そのとき、カミサンがいろいろ聞いたらしい。ラーメン店の近くにアパートがある。歩いてスーパーへ買い物に来た帰りだった。「また来ます」といってわが家を出た。

それから1週間後、エド君が顔を出した。そのとき、ドライマンゴーを置いていった。

そして、3回目。8月に入って、彼女と一緒にやって来た。彼女は当時、大阪で介護の仕事をしていた。

彼女は、第一印象は日本人と変わらない。そう感じるほど顔立ちが日本人に似ている。

日本語の勉強をしているということだった。わが家に外国人用の日本語の教材があったので、カミサンがそれを彼女にプレゼントした。やがて彼女は試験に合格し、いわきで介護の仕事を見つけた。

同じ年の暮れには、エド君がチョコレートの詰め合わせを持ってきた。クリスマスプレゼントだという。自転車を卒業して、「車を買いました」。そう報告に来たこともある。

最近は顔を見せることもなかったが、それも無事に暮らしている証拠だ。そこへ突然、2人で現れたから驚いた。

雨が取り持つ縁だ。傘だけのつながりだが、それを大切にしてくれていたのだと思うと、胸が少し熱くなった。

「神戸へ行っても、いわきはふるさとです」「第二の、な」。「いわきのお父さん・お母さん」は、2人が着実に人生のキャリアを積み重ねていることに、うれしさと寂しさを感じてならなかった。

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