2025年5月23日金曜日

情報に感謝

                                            
 たまにブログのコメント欄を開く。新しいコメントが入っているときがある。先日は「カエデ」さんから、やなせたかしの父親と草野心平に関する情報が寄せられた。

 「クエルボの人」さんからは「令和の米騒動」にからんで、毎日新聞の「余録」にライスキング国府田敬三郎が取り上げられたことを教えられた。ありがたいことである。

 カエデさんの情報は、ノンフィクション作家梯久美子さんが書いた評伝「やなせたかしの生涯――アンパンマンとぼく」(文春文庫、2025年)=写真=の中に出てくるものだった。

 やなせたかしの父親・清が朝日新聞の特派員として中国に赴任していたとき、草野心平らと「一葉社」という短歌結社をつくっていたことが書かれています。心平は広東省の大学に在学中だったそうです――。

初耳である。念のために、いわき市立草野心平記念文学館が発行した図録の年譜に当たると、大正13(1924)年・21歳の項に「一葉会」の記述があった。読み飛ばしていたのだ。

同年9月、心平は嶺南大学最終課程に進級する。同時に、学内に新設された「日本語講座」の担任講師となる。さらに、広東の教会でキリスト教徒として洗礼を受けたが、すぐ帰俗する。

 そのあとにこうある。「当時、日本人居留地、沙面の同好者が集まって『一葉会』なる短歌会が結成され、広東領事館書記官足羽憲太郎夫人雪野らと心平も有力メンバーであったが、翌年六月の沙基事件の直前に解散となる」

 「一葉社」と「一葉会」。「社」と「会」の違いはあるが、心平が短歌の集まりに加わっていたことは、年譜からも裏付けられた。

 まずは『やなせたかしの生涯』を読まねば――。ネットで調べると、本は出たばかりで、文庫本であることがわかった。

 作者は、評伝には定評のあるノンフィクション作家で、いわきでも吉野せい賞表彰式で講演をしたことがある。そのときの講演概要が雑誌「うえいぶ」第49号に掲載された。

 当時、この雑誌の編集を担当していたので、講演内容を原稿にまとめ、主催の市を介して梯さんに掲載許諾の連絡をとったところ、快諾を得た。

 その梯さんが書いたやなせたかしの評伝である。これはぜひ手元に置かなくてはと、マチへ行ったついでに本屋へ寄ったのだが……。

ほかのやなせたかし関連本はあっても、『やなせたかしの生涯』はない。後日、また本屋へ行って文庫本コーナーをなめるように見たら、1冊だけあった。

奥付を見ると、3月に発売されてすでに7刷に入っている。どうやら売れ行きは好調らしい。

 カエデさんが紹介した部分は、「第1章父と母」の中ほどに出てくる。父・清は「取材・執筆のかたわら、広東省の大学に在学中だった詩人の草野心平らと『一葉社』という短歌結社を作るなど、文学活動も楽しんだ」。

心平と短歌、やなせたかしの父と心平の関係、あるいは一葉会か一葉社か、調べる楽しみがまた増えた。

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