2011年8月24日水曜日

戸部健一写真展


「戸部健一写真展――東日本大震災の記憶・ふるさとの渚で」=写真=がきのう(8月23日)、いわき市平字大町のエリコーナで始まった。31日まで。

戸部さんは平下高久出身の元テレビニュースカメラマン。国会担当、ベトナム戦争特派員などを経てドキュメンタリー番組を手がけ、フリーになったあとは映画「愛しき日々よ」の撮影監督などを務めた。東京とふるさとを行き来しながら戸部プロダクションを経営している。いわき地域学會の幹事でもある。

3・11でふるさとのハマはすっかり変わり果てた。ただ呆然とするしかなかった。が、マスコミが取材に入って来ない。これではいわきのハマの惨状が伝わらないではないか。親戚の女性とその孫2人が津波の犠牲になったこともあるだろう。戸部さんは気を取り直していわきのハマを巡り、シャッターを切り続けた。

震災初期の取材は現役の記者たちにまかせればよい。それが例えば、いわき民報の震災写真集『いわきの記憶』を生んだ。記者たちは津波に追われながらシャッターを切った。震災渦中の現場に立っていたからこそ、臨場感あふれる写真集になった。いわきの「そのとき」をここまで伝えている写真集はほかにない。

それとは別に、一呼吸おいたところからカメラでハマの惨状をとらえ直したのが、戸部さんだ。報道カメラマンとしての経験が、思想が切り取った写真が並ぶ。「やはり、戸部さんの写真ですね」というと、うなずいた。「伝達」と「表現」をはかりにかければ、「表現」に傾く。その「作品」の1点1点から伝わってくるのは人知を超えた自然への畏怖だ。

人間は自然への畏怖をどこかに置き忘れてきた。それがかえって自然を汚し、人間を苦しめることになった――。自然と人間について、深く内省を迫る写真展と言えば言えるか。

0 件のコメント: