2011年8月18日木曜日

稲作中止田


お盆に阿武隈高地の実家へ帰った。6月にも、震災の様子を確かめるべく、線量計を持って出かけた。同じ道を利用した。いわき市平~同小川町~同川前町~川内村~田村市都路町~同常葉町をたどるルートである。沿線の風景は2カ月前と同じかどうか、変わったとしたら何が変わったか、それだけを注視することにした。

夏井川渓谷(小川)の無量庵で少し土いじりをしたあと、支流の中川渓谷を縫う“スーパー林道”(広域基幹林道上高部線)を、川前・荻へと駆け抜けた。両側から迫ってくる万緑に圧倒される。オニユリとギボウシが咲いていた。クサギとハギも花を付けていた。荻では毎年お盆のころ、フシグロセンノウの花を見かける。やはり、今年も道端に咲いていた。

荻の田んぼにはイノシシ除けの電線が張られてあった。が、今年は稲作を中止したので、不要になった。田んぼには夏草が繁茂していた。オオマツヨイグサが目立つ。

県道上川内川前線から同小野富岡線へと道をつないで川内村に入る。道端の草がきれいに刈られてあった。ドライバーにはそれだけで気持ちがいい。田んぼはしかし、マツヨイグサがいっぱい花を付けていた。そんな状態が、田村市常葉町の東部(山根)まで続いた。

つまり、川前・荻、川内、都路、常葉東部の山里は、集落と山との間に、田んぼだか草原だかわからないような空間が広がっていた。

常葉の一筋町に入る手前、石蒔田でやっと水田に出合う=写真。風もない炎天下、整然と稲が伸びている。常葉の川は西流して、やがて阿武隈川に合流する。石蒔田から下流の西では、ほぼ稲作が行われた。ムラとして当たり前の風景が広がっている。

ただし、稲作中止による補償金の問題が人の心に暗い影を投げかけている、といった話を聞くと、心は穏やかではいられない。

お盆を前に行政が業者に発注したのか、あるいは一時帰宅をした住民が草を刈ったのか、総じて道はきれいだった。問題は、草が茂りに茂った稲作中止田だ。美しい農村景観を復活させるには、まず田んぼの雑草を退治しなくてはならない。ムラに根づく伝統的な美意識を途絶えさせてはならない、と思うのだった。

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