2011年8月3日水曜日
写真集『いわきの記憶』
写真集『いわきの記憶』のことを書こう。正確には『東日本大震災 特別報道写真集 3.11あの日を忘れない いわきの記憶』=写真。タイトルとしてはちょっと長い。散文的でもある。古巣のいわき民報社が発行した。
先行予約の記事が載ったとき(夕刊だから、晩酌をしようかという矢先)、すぐさま会社に車を飛ばして3冊を注文した。景気づけの意味もある。連絡がきて、7月13日に写真集を取りに行った。
あの日3・11、小名浜で、四倉で取材していた記者が津波にマイカーを流された。本人たちも津波に追われた。小名浜の記者は、県小名浜港湾建設事務所に駆け込んだ。その記者たちが撮影した「そのとき」の写真、読者から提供された別の場所の「そのとき」の写真もある。
空撮のような「鳥の目」の写真はない。すべて被災者と同じ目線、「ヒトの目」の写真だ。津波がすぐそばに来ている、その迫真性。被災住民にとっては、自分の体験した世界がそこにある。
荒々しい「波の壁」に多くの人がのみこまれた。その時間に一番近い姿を映し出している写真集だ――といえば、なんだ古巣の応援歌か、と言われるかもしれない。その通り。でも、それだけではない。
これは、いわきの文化にとって大変なニュースだ。いわきの出版文化史という切り口からみると、かつてない現象が起きている。そう感じたのは、鹿島ブックセンターの従業員のツイッターにこうあったからだ。「かき氷がとけるがごとく、なくなっています」。月並みな言葉でいえば、飛ぶように売れている。エッ!である。
初刷りからほぼ半月。同書店へはきのう(8月2日)を含めて二度出かけたが、二度とも品切れで「本日午後□時頃入荷」「8月10日頃入荷」の張り紙があった。これは取材しないわけにはいかない。
で、わかったこと。わずか半月で1万部以上は出た。いわき市で出版物が1万部を超えれば「ベストセラー」だ。それは、いわき地域学會でかなりの数の出版物を手がけた経験から言えること。間もなく1万5000部はいくだろう。いや、私の経験知(あてにならないかもしれないが)からは、1万8000部、2万部も視野におさめていいかもしれない。
鹿島ブックセンターだけではない。やはりきのう、写真集の有無をチェックするためにヤマ二書房のラトブ店、本店を巡った。写真集はなかった。8月10日頃の入荷待ちということなのだろう。
過去のベストセラーのなかには、書店だけでなく、みんなで手分けして“行商“した結果、大台に達したものもあった。今度のように、書店の平積みだけで、それこそ「かき氷がとけるがごとくなくなる」ことはなかった。
前にこの欄で紹介した写真集『HOPE』も増刷された。鹿島ブックセンターに平積みされていたので、分かった。これもまた、いわきの海と人の鎮魂と希望の写真集だ。
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