2016年7月25日月曜日

「ZINARI」展

 きのう(7月24日)は、北部の四倉・久之浜を除いていわき市内を一巡した。南部の鮫川流域へ出かけると、だいたいそうなる。いわきの面積は小豆島を除いた香川県とほぼ同じ。一つの行政圏に三つ、いや久之浜を加えると四つの流域(生活圏)がある。リタイア組はほとんど自分の生活圏で用をすませているから、別の流域へ出かけると「旅」をした気分になる。
 早朝7時から1時間、夏井川渓谷の隠居で土いじりをした。一休みしてから草野心平記念文学館へ。事業懇談会に出たあと、「ZINARI」展(7月31日まで)を見に、常磐道を利用して鮫川支流・四時川沿いの田人・ギャラリー「昨明(かる)」へ出かけた。帰りは海に一番近い道路を選んで、岩間~新舞子海岸の堤防の先に海を感じながら(見ながら、ではない)、いつもの魚屋へ直行した。

 きょうは「ZINARI」展について――。旧知の吉田重信さん(いわき)のほか、市外の3人が出品している。“震災アート”だ。吉田さんは新舞子海岸の流木を素材にした「聖」と題する作品を発表した。
 
 倉谷拓朴さん(横浜)は、原発事故で被曝した土地の植物を、印画紙上に置いて感光させた日光写真(フォトグラム)を展示した=写真。K・Koughさん(大阪)は鉛の手袋とマスクを、中村通孝さん(埼玉)は真ん中が透明な座卓の底にお菓子のようなフレコンバッグを積み上げた作品や、富岡町から採取した植物の葉を収めた“アルバム”などを並べた。
 
 これらの作品と向き合いながら、簡単に「脱原発」あるいは「反原発」へ行かないように、と自分に言い聞かせた。結論はそうだとしても、見る側としては作品と交感したい、作品として楽しみたい、そうやって考えを深めたいと思うからだった。
 
 倉谷さんのフォトグラムには既視感があった。原発事故後、NHKETV特集取材班が初めて放射能汚染の実態を明らかにした。取材班が著した『ホットスポット――ネットワークでつくる放射能汚染地図』(2012年、講談社)の口絵に、「イメージングプレートで視覚化された松の葉」の写真が載る。それを思い出した。
 
 倉谷さんの作品は、植物の姿が鮮やかなブルーで定着されている。イメージングプレートの方は、放射線が強いと黄色、さらに強いと赤色で表現される。1Fから4.4キロの双葉町山田地内の松の葉は全体が赤、そのうえ周囲が黄色、22キロ離れた田村市都路町の中学校の松の葉は全体が黄色で、下部を中心に赤ポツが散らばる。片やアート、片や科学。どちらも見えないものを「見える化」する試みにはちがいない。
 
 倉谷さんの作品には「彼岸花0.72μsv」「杉0.08μsv」といった題が付いている。植物のあった場所の放射線量を示し、さらに撮影年を記す、きわめてドキュメント性の高いタイトルだ。少なくとも福島県内の人間は数値の意味するものを読み取ることができる。「彼岸花」のブルーの濃淡が印象に残った。
 
 ついでながら、展覧会名の「ZINARI」からは、天変地異に通じる「地鳴り」を連想するが、ほんとうはどうなんだろう。(あとで吉田さんからコメントが入った。「世界の地響きも意味します!」、なるほど)

0 件のコメント: