イギリスの詩人T・S・エリオットの「4月は残酷な月だ」にならっていえば、わが家の「7月は散々な月」だった。
ある日(みんな「ある日」だが)――。メガネのつるが壊れた(フレームを交換)。風呂場の電球が切れた(買い置きの電球と交換)。魔法瓶が壊れた(ヤカンで代用)。ファクスが機能しなくなった(eメールでやりとり)。テレビの画面がおかしくなった(いよいよ症状が悪化、買い替えるしかなさそうだ)。
平屋を2階建てにしたのはおよそ35年前。台所の床も風呂場の前の床もミシミシいうようになった。5年前の震災で家が「大規模半壊」に近い「半壊」の判定を受けて、窓や戸の開閉がきつくなった。それが裏目に出た。
店(米屋)の一角にカミサンが運営する地域図書館「かべや文庫」がある。おばさんたちの茶飲み場でもある。フェアトレード商品も展示・販売している。ある日の早朝、カミサンが見ると文庫の様子がおかしい。東側の出窓の外に、中に置いてあった茶わん入りのかごなどが置いてある=写真。フェアトレード商品の売上金もなくなっている。どう考えても「ドロボウに入られた」としか思えないという。
若いときに「サツ回り」をした。そのときの取材経験からいろいろ推測する。が、やって来た“ドロ刑”(ドロボウ刑事)さんの見立てはさすがだ。犯人はカギのかかっていなかった出窓から侵入し、カネだけ5~6万円を取ってまた出窓から逃げた。日曜日の昼間、「空き巣」に入ったというよりは、夜更けもしくは未明、寝静まってから忍び込んだようだ。
米も、レジも無事。荒らされたのは文庫だけ。レジは寝室のわきにある。いつも電気スタンドをつけっぱなしにして寝てしまうので、真夜中でもうっすらレジの方に明かりがもれている。レジへ近づく度胸はなかったらしい。
東京・目黒の公園で切断された高齢女性の遺体が見つかった事件は、その後の調べで、盗み目的でマンションに侵入した男が気づかれたために、居直り殺人をしたことがわかっている。そんな事態にならなかっただけでもよしとするしかない。「あつものに懲りてなますを吹く」というよりは「後の祭り」だが、ドロボウの一件以来、車も戸も窓もカギを締めるようになった。
そういえば、6月には隣のコインランドリーで下着ドロに及んだ男が捕まっている。世間は煩悩の苦海。私たちは善とも悪とも隣り合わせで生きている。
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