2016年7月10日日曜日

シリアの石鹸

 前に、NHK「あさイチ」で紹介されたのを見て、ブログで「アレッポの石鹸」(以下、「石鹸」)について書いたことがある。その後も「おはよう日本」で「石鹸」の今が紹介された。
 それと前後して、カミサンに「石鹸」の輸入会社から電話が入った。「いわきで買いたいが、どこで売っているのか」という問い合わせがあった。調べたら、以前にわが家(米屋)で売っているのがわかったので連絡した――という。卸会社を通じて「石鹸」を仕入れていた。震災前後に取引が途切れてからは、自家用分を別の店から買うようになった。

 アレッポはシリア最古のまちで、地中海に面した港町ラタキヤから北東の内陸部に位置する。震災前の2008年8月、小名浜の港づくりを視察に来た外国の「港湾開発・計画研修員」がいわき市暮らしの伝承郷を訪れた。園内でいわき地域学會が「いわき学・じゃんがら体験プロジェクト」を開いていた。彼らも「じゃんがら念仏踊り」の輪に加わった。
 
 なかにシリア・ラタキヤからの研修員がいた。通訳を介していろいろ話した。そのときは、2年7カ月後に東日本大震災が、それと前後してシリア内戦が起きるとは思ってもいない。こちらの市民も向こうの市民も大きな災禍に見舞われた。

 カミサンがまた「石鹸」を扱うことになった。「石鹸」はオリーブオイルとローレルオイルの配合比によって値段が異なる。ローレルが2%の「ライト」=写真=を仕入れた。

 この石鹸を洗髪にも使うようになってからだいぶたつ。ぴたりとフケ・かゆみが止まった。それだけでもすごいのに、まだ使いこなしていなかった。テレビで知ったが、足の裏を洗うと潤いが出てくるという。足裏も洗い始めたら、カサカサとひび割れ、皮のはがれが少し落ち着いた。やがてツルツルになるかもしれない。その期待がふくらんで、このごろは入浴が楽しみになった。
 
 輸入会社が取引している「石鹸」製造業者は、空爆下のアレッポを脱出してラタキヤへ移った。1000年の歴史を誇る「石鹸」はかろうじて命脈を保った。戦争は、人命・財産はむろん、文化を、歴史を、生業を、生活を破壊する――「石鹸」を使いながら、いつもそんなことを思っているわけではないが、シリアのニュースに触れるたびに胸が痛む。平和あってこその「石鹸」だ。

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