2017年5月20日土曜日

『いわきの地誌』再び

 書店としては、学術系の本が何十冊も売れるとは思っていなかったのではないか。私も思っていなかった。手前みそながら、いわき地域学會が発行した『いわきの地誌』=写真=が売れているという。爆発的に、ではない。静かに、少しずつ。
 1月下旬、ヤマニ書房本店(いわき平)と鹿島ブックセンター(同市鹿島町)の2書店に販売を委託した。とりあえず20冊を――ということだった。1カ月後、ヤマニから追加の注文があった。それからさらに3カ月弱、いわき民報と福島民報で『いわきの地誌』が紹介された。それで売れ行きにはずみがついたという。両書店から追加注文があった。きのう(5月19日)も朝一番で鹿島ブックセンターに20冊を届けた。

 地誌学とは――と本書にある。自然地理学と人文地理学を、「ある特定の場所、範囲で系統的かつ総合的に記述して、その土地、範囲の全体像を描きながら特性や個性を構造的に示していく分野」の学問だ。

「通常の地理論書に示されるような何処に何があるかという観光案内的な書き方やデータの説明でページを使うというような姿勢が少ないことをご承知おき願いたい」ともある。表紙も情けないほどそっけない。

 出版に当たっては、自己資金だけでは足りないので、いわき市文化振興基金と公益財団法人東邦銀行教育・文化財団の助成を得た。発行部数は本の内容からしてこのくらい、ページ数からして印刷費はこのくらい――となり、最初から原価割れの値段で頒布することにした。

「赤字」は避けたい。「黒字」の可能性はない。助成金がその差を少しでも埋めてくれればいい。で、あとは売ってトントンの「白字」にする。そんな思いで、制度的な助けを受けた。同級生には、飲み会の席で見返りなしの「クラウドファンディング」を持ちかけた。

 その結果、1人の同級生から、そして、いわき市に避難し、友達になった人からも寄付金をいただいた。「白字」になる見通しがたったわけではないが、「赤字」幅がかなり縮小した。もう少しで水中から浮上して息がつける。

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