2017年12月17日日曜日

特許の大根おろし

 きのう(12月16日)、おろしにしかならない辛み大根の話を書いた。その続き、というわけではないが――。大根おろしも特許になる、という記事を読んだ。
 福島(当時・平)高専陸上競技部の先輩で弁理士の佐藤辰彦さんが、福島民報に「知財ノート――知は財をつくる」を連載している。“事例紹介エッセー”で、金曜日(12月15日)は「『大根おろし』も特許に」だった=写真。

 ある企業が、コーヒーのミルクカップのような感覚で大根おろしを小分けにしてコンビニなどで売りたい、と考えた。そのためになにをヒントにしたか。細かい話は記事を読んでもらうしかないが、ポイントはこうだ。
 
 大根おろしを冷凍し、解凍すると、繊維と水分が分離する。大根おろしにならない。アイスクリームを食べているうちにひらめいた。アイスクリームは融けてもなかなか成分と水分に分離しない。調べると、カルボキシメチルセルロースが“糊(のり)”の役目を果たしていた。大根おろしに食品添加物として認められているそれを加えたら、解凍しても大根おろしのままだった。その結果、それが特許になった、という。
 
 佐藤さんは福島高専の1期生。私は昭和39(1964)年入学の3期生。学生のあらかたは寮に入った。入学式を終えた晩、寮の食堂で歓迎会があった。先輩を代表してあいさつしたのが佐藤さんだった。立て板に水のような弁舌。2歳しか違わないのに、大変な人がいると、びびった記憶がある。実際、弁の立つ先輩が少なくなかった。
 
 1期と2期の先輩には脱・高専(エンジニア)組がいっぱいいる。弁理士、弁護士、医師、大学教授、地方政治家、オペラ歌手……。3期以下の私らになると、新聞記者、週刊誌記者、雑誌編集者などというレベルで、世の中をはすに見る人間が増える。
 
 佐藤さんは工業化学科の出身だったと記憶している。カルボキシメチルセルロースは、増結剤・乳化安定剤として歯磨剤や水性インクその他に使用されている。大根おろし+増結剤というアイデア転用の価値を、たぶんすぐわかったはずだ。
 
 今度の「知財ノート」が面白かったのは、一般の消費生活の分野でも特許になるものがあるということだ。単純に振り分ければ、弁護士は文系、弁理士は理系。根っこに自然科学があると認識にゆらぎが少ないのではないか、というのが、この学校からドロップアウトした人間の実感だ。

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