2011年6月4日土曜日
ヘンな店
「内郷にオーガニックカフェができた」。カミサンがいうので、運転手をつとめる。はがき大の案内カードには、私立の「磐城一高近くです」とある。国道6号から旧道(浜街道)に入り、磐城一高の前を過ぎる。が、それらしい雰囲気の店はない。昔ながらの家並みが続くだけだ。
カミサンが同級生の文具店で場所を聞く。看板は出ていないが、「ここではないか」とカミサンが目星をつけた2階建ての家がある。見た目はただの住宅。同級生が小雨の降る中、道路に出てきて場所を教える。目星をつけた家がそれだった。「オーガニックカフェ&工房 倭夢(わむ)」
前は家を縦割りにして2世帯が入るアパートだったという。男の目から見ると、「ヘンな店」だ=写真。室内が細かく仕切られている。フランス人形が動き出してどこかに隠れていそうな感じ。
店内をよく見る。蛇口、流し、板張りの床、ガラス戸、仕切り壁、照明、器……。「ヘンな店」という印象は、それらがホームセンターで売っているような大量生産品とは無縁のものだったからだ。要は個性的。吟味したあとがうかがえる。
テーブルも、イスも一つひとつ違う。革のバッグデザイナー、美術商(古物商)を兼ねるオーナーの女性が見立てた。売り物でもある。若い作家の作品も展示・販売している。2階は工房。仲間の女性が布のバッグをつくっていた。
カミサンには旧知の女性だ。私も話したことはないが、何度か顔は見ている。アートキルトを手がける「和田のお姉さん」の、年下の友達だった。和田さんらが出演する朗読コンサートの手伝いをしており、そのときに髪形などが個性的なので印象に残っていたのだろう。
オープン準備中に「3・11」に遭遇した。幸い、大きな被害はなかった。オーガニックカフェである。梅干し味の番茶を頼んだ。隣は10階建てのマンション。ビル風が強烈なので看板を掲げられない。地面を掘るのだという。杭のような看板が立つのかな――番茶をすすりながら、そんなことを思った。
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