2015年2月1日日曜日

なにが「遠く離れた」?

 いわき昔野菜フェスティバル③を書くつもりだったが、カリカリして我慢できなくなったので――。

 もう35年ほど前の話。大平正芳元首相の親友で義父の友人でもある梅野典平さんが近所に住んでいた。首相とは同級ではないが、髙松高商・東京商大(現一橋大)と同じ道を歩み、大学を落第して一緒になったときもある。その後は文字通り「刎頚(ふんけい)の友」となった。共にクリスチャンだ。

 いわきで仕事に就いた。やがて悠々自適の身となり、週末、ときどき散歩がてらわが家へやって来た。梅野さんが70歳超、私が30歳前後のことだ。生意気な口をきく若僧が面白かったのだろう。こちらは逆に、梅野さんを介して「アーウー宰相」の政治哲学、知性・教養に思いが至るようになった。
 
 1月30日の衆院予算委員会での、安倍晋三首相の答弁に驚いた。福島県は県民の総意として県内すべての原発の廃炉を求めている。そのことに関して質問を受け、「事故を起こした発電所(福島第一原発)から遠く離れた第二原発については、(略)事業者が判断を行う」ことだと答えた=写真(1月31日付福島民報)。
 
 東電まかせ、当事者意識の薄さは今に始まったことではない。それよりなにより、2Fは1Fから12キロしか離れていないのに、その距離を「遠く離れた」という感覚が解せなかった。なにをふざけたことを言ってるんだ! テレビのニュースを見ながら、むかっ腹が立った。
 
 わが家は、1Fからはおよそ40キロの地点にある。地震が起きると1Fのことが気になる。それは「遠く離れた」場所ではなく、「すぐ近く」にあるからだ。いわきの「すぐそばの原発」だからだ。
 
 あのとき、1Fがおかしくなったら、すぐ近くの2Fも人間がいられないのでダメになる。すると、東日本は――というところまで懸念されたのではなかったか。1Fと2Fが遠く離れているなら、1F・2Fと東京の距離はそれこそ、地球と月ほどに遠く離れていることになる。(なにかのために、なにかからアンダーコントロールされているのではないかと、これは私のなかの邪悪な私の声)
 
 大平首相は「アーウー」を取ると、理路整然としている、とよく言われた。ほんとうのことを、正確にいうための「アーウー」だった。3・11後、なぜかしばしば大平元首相の顔を思い浮かべるようになった。

1 件のコメント:

issay matsu さんのコメント...

そうですね。大平首相はアーウーとしかイメージなかったですが、ずっとなぜかわか
りませんでしたが・・・それをのぞけば、
その間一瞬に言葉を深く考え、選んでたの
かと今回わかりました。