勤勉な人の家庭菜園では、もう夏野菜の収穫が始まったことだろう。二十日大根(ラディッシュ)やカブは二巡目に入ったかもしれない。キヌサヤエンドウは終わりのころ、キュウリ・ミニトマト・大葉(アオジソ)は走りから旬、といったところか。
夏井川渓谷の隠居で“週末菜園”を始めてから20年弱になる。4年前には東日本大震災に伴う原発事故で大地が汚染された。隠居の庭が全面除染の対象になり、2013年師走、表土が5センチほどはぎとられた。4畳半2間くらいの菜園が、それで消えた。あとに山砂が敷き詰められた。
翌年春、つまり去年、カブと二十日大根(ラディッシュ)の種まきから家庭菜園を再開した。三春ネギ以外は足踏み状態の4年だった。月遅れ盆のあとには辛み大根の種をまき、10月に入ると、冷蔵庫に眠っていた三春ネギの種をまいた。こちらは前年の残り種だから、発芽率は落ちると思ったが、苗床がまばらになるようなことはなかった。
辛み大根は半分を越冬させ、1カ月前と日曜日のおととい(6月21日)の2回に分けて、種の眠るさやを収穫した。同時に、三春ネギの苗を掘り起こし、溝を切ってネギ苗約150本を定植した=写真。育ちが悪かったので、いつもの年よりはずいぶん遅い作業になった。手前にはこぼれ種から芽生えた赤ジソが葉を広げている。
と書くと、簡単に定植ができたように聞こえるが、朝9時に隠居で食事をとり、午後1時に昼食をとって昼寝をしたあと、午後3時すぎまで黙々と庭で作業をした。正味5時間の土いじりだ。今年、いやこの4年間で初めての長丁場だ。溝切り・苗の選別・定植と体を丸めての作業が続いたために、立ち上がるたびに腰が悲鳴を上げた。
若いころ、腰の曲がったじいさん・ばあさんを見て、<ああはなりたくないな>と思っていたものだが、この年になるとなぜそうなるのかがわかったような気がする。曲げていないと腰が痛い人もいるのだろう。痛みを抑えるために前かがみになって歩くと、「年寄りみたい」とカミサンが笑った。言い返せないのがつらい。
きのう、あるところで「ネギを定植して腰が痛い」というと、若い女性が「ネギの定食?」と首をかしげた。そう、ネギの定食でもある。
定植するためにネギ苗を選別したが、9割は未熟で畑の肥やしになった。そのなかからやや太めの“芽ネギ”を持ち帰った。みそ汁、たまご焼き、納豆の具に使う。しかし、楊枝から稲わらほどの太さだから、味は薄い。ほかに食べ方は? サラダにどうか、シソ入り油味噌をからめたらどうか――うまい食べ方を模索しての“ネギ定食”がしばらく続く。
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