2015年6月6日土曜日

「海のことを忘れかけている」

 いわきフォーラム’90のミニミニリレー特別講演会がおととい(6月4日)夜、いわき総合図書館のグループ閲覧室で開かれた=写真。いわき明星大復興事業センター震災アーカイブ室の客員研究員川副(かわぞえ)早央里さんが講師を務めた。
 総合図書館はいわき駅前のラトブ4・5階にある。5階の地域資料展示コーナーで、2014年12月5日から「東日本大震災浜通りの記録と記憶 アーカイブ写真展」が開かれている。同大復興事業センターと同図書館の共催で、5月末までの予定だったのが10日ほど延長された。
 
  震災アーカイブ室では、“未来へ伝える震災アーカイブはまどおりのきおく”として、震災後の浜通り各地の写真や資料を収集している。その仕事をしているのが、震災の年の12月、東京で知り合った若い社会学者川副さん(当時、早稲田の大学院生)だ。2012年9月に震災アーカイブ室の客員研究員になった。
 
 フォーラム‘90の会報「まざりな」で開催を知り、夫婦で川副さんの話を聴きに行った。川副さんの講話のあと、展示コーナーを見学し、部屋に戻ってフリートークをした。津波襲来の写真を提供した豊間の民宿「えびすや」鈴木利明さんの述懐が胸にしみた。
 
 津波襲来時のことではない。今は「豊間から8キロ離れた山の中に住んでいる。海が見えない。海のことがなにもわからない。海のことを忘れかけている」。鈴木さんは海の男だった。オカに上がって民宿を開いた。鉄筋コンクリートの建物だから、津波に襲われても耐えた。が、今は解体されてあとかたもない。
 
 ハマから離れた内陸部での仮住まいが長くなった。ハマに早く戻りたいのに、復興計画が遅れるという連絡が入った。海とつながっているからこその人生、それがいつ戻れるのかわからないもどかしさ、怒り。「海のことを忘れかけている」。津波被災者の内面にまでは想像力が届いていなかった。

 東京でいわきの話をしてもヒトゴト、いわきでもマチの人はハマのことがわからない――地域による認識の違いにも触れた。思わず手を挙げた。いわきはハマ・マチ・ヤマに分かれる。マチの人はハマのことにも、ヤマのことにも思いが至らない。広域都市ゆえの地域差・温度差がある。鈴木さんのいう通りだ。そんな話をした。

 あらためて思うのは、広いいわきをどう「見える化」するか。それを、どこに住んでいても共有できる工夫をしないと、いわきのハマ・マチ・ヤマは永遠につながらない。

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