2015年8月17日月曜日

猫の墓

 人間の送り盆が終わったら、猫の野辺送りが待っていた。3匹いた猫のうち最後の1匹がきのう(8月16日)、朝8時前に息を引き取った。ターキッシュアンゴラ系の雌で、避妊手術をしたあと、ぶくぶく肥っていたのが、今夏、急激にやせた。最近はえさも食べなくなって、ちいさなスフィンクスのようにじっとしていることが多かった。
 震災時、わが家には茶トラの雄「チャー」と、それより若い同じ茶トラの雄「レン」、そして太った雌の「サクラ」がいた。

「チャー」は老衰が進行していた。後ろ足を引きずり、排便もきちんとできなかった。その猫が震災を機によみがえった。自分で歩いて、排便もできるようになった。が、奇跡のいのちは1年で尽きた。

 その後は「チャー」の前で小さくなっていた「レン」の天下だった。「レン」と「サクラ」は、時を前後して拾われてきたためか、きょうだいのように仲がいい。しかし、「レン」にも老衰の兆しが見えるようになった。今年(2015年)春の彼岸の中日、「レン」が死んだ。それから5カ月後の送り盆の朝、サクラが後を追った。
 
 行政区の精霊送りは朝6時に始まる。区の役員が時間を決めて祭場の管理をする。「サクラ」のいのちが尽きかけていることはわかっていたので、早朝5時台、ときどき様子を見ていたら、5時半すぎに猫ノミが体毛の先端に現れてきた。臨終のサインだ。カミサンを起こしたあと、精霊送りの祭場へ出かけ、いったん朝食に戻るといのちが尽きる寸前だった。

 夏井川渓谷の隠居(無量庵)の庭は広い。梅の木の下に「チャー」の墓がある。「レン」はときどき、「チャー」に威嚇されていた。あの世でもケンカするようでは困るので、離して埋めた。あとで、孫が母親の手を借りて墓標を立てた。精霊送りが終わったあと、隠居へ「サクラ」を運んで「レン」の隣に埋めた=写真。カミサンが庭のミソハギを手向けた。
 
 この5年弱はともに3・11を経験した「震災家族」だった。その3匹が土に帰った。これで、わが家は人間のほかに、飼っている生きものはいなくなった。しばらくは、ヒト科の生きものだけでいい。そんな思いでいる。

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