2015年8月10日月曜日

サマーセミナー

 きのう(8月9日)は朝10時から、いわき市暮らしの伝承郷で「いわき昔野菜保存会」のサマーセミナーが開かれた=写真。伝承郷の館長が「いわきの盆」について、私が「いわきの伝統食」について、それぞれ30分話した。保存会の会員約20人が受講した。
 伝承郷にあるかやぶきの古民家は5棟。丘をはさんで手前に3棟並ぶうちの左端、旧川口家が会場になった。江戸時代から代々、宿場町(内郷御厩町)で醤油業を営んでいた――と案内にある。事前に知っていれば、「伝統食」の話に味をつけられたのに、気づくのが遅れた。古民家=農家という思い込みに支配されていた。
 
 広間と上座敷をぶち抜き、雨戸と障子戸を開け放した屋内は涼しかった。向かい山から渡ってくる風が心地いい。横になって朝寝をしたかったが、我慢した。
 
 20年前に『いわき市伝統郷土食調査報告書』が公刊された。市観光物産課(当時)がいわき地域学會に調査・編集を委託した。歴史や民俗に詳しい故佐藤孝徳さんを委員長に、数人が調査に従事した。私は主に編集・校正を担当した。一部、調査にも同行した。
 
 調査報告書を基に話した。いわきの食文化の特色は①浜の料理が多彩で豪華=「海の道」で千葉・茨城とつながる②農山村はよごし類・てんぷらなど全国共通のものが多い=山里もまた地続きの他自治体と簡単につながる――といったことを紹介した。
 
 最初に伝統食のはかなさを強調した。伝統食はその土地の第一次産業、産物と結びついたものだから、その産業がすたれ、産物が手に入らなくなると、食の技も食習慣も消滅する。伝統食だから盤石、などということはない。
 
 しかし、伝統食は創意工夫のなかで絶えず生みだされるものでもある。盛衰を繰り返しながら、過去から未来へと伝統食は姿を変えて受け継がれていく、ということも併せて話した。
 
 磐城(今のいわき市、富岡・楢葉・広野町、川内村)には東北で最も早く江戸の食文化が流入した。江戸は醤油の一大消費地。醤油が「食の革命」をもたらした。磐城―江戸の海上交通路の近くに醤油醸造の地(銚子・野田)があった。磐城にもそこから醤油が入ってきた。ただし、村々に醤油業が起きるのは幕末以降――といった話は、時間がなくて半分はしょった。
 
 立秋の日に一服した酷暑が、翌日には復活した。サマーセミナー、古民家(醤油業)のうす暗い涼しさに刺激されて、昭和30年代前半の、阿武隈は町場の夏休みを思い出していた。
 
 近所の神社に毎朝、子どもたちが集合した。ソメイヨシノかなにかの樹下にゴザを敷き、長い座卓を出して「夏休みの友」をやった。少年団が主催したのだったか。それを終えると、川へ水浴びに行った。「緑陰教室」がないと、ナツトモはぎりぎりまでやらない――という現実があったのだろう。
 
 サマーセミナーでは、いわきの昔野菜を使った特製弁当を食べたあと、伝承郷の畑で栽培している昔野菜のうち、1種類(名前を忘れた)を収穫した。昔野菜保存会員は伝承郷畑ボランティアでもある。私も登録しているが、今回は話して食べるだけにして、農作業は遠慮した。

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